INTERVIEW 008 | SATIS
デメリットをメリットに変える
設計:中村高淑/中村高淑建築設計事務所(自宅+アトリエ)
この家は中村さんの自宅兼アトリエです。間口が4.5m、奥行きが13.6mの細長い敷地に、建物の間口2.77mという広さ。極小スペースの大きさですが、内部に入ると明るく見通しのよい空間は狭さを感じさせません。1階は事務所機能と趣味のクルマとバイクのスペース、イベントスペースも兼ねているそうで、ガラス張りの外観からみると、まるでクルマのショールームのようにさえ見えます。手入れの行き届いたポルシェと大型のバイクそしてライダースーツが美しく置かれています。気が向いたらいつでもそのまま出かけられる状態です。
2階は大きなキッチンとダイニングと陶芸家の奥さまの工房です。リビングはあえてつくってはいませんが、料理をしながら会話をし、多くの人が集まってくつろぐ様子が想像できます。このダイニングスペースは設計の相談に来たお客さまとの打ち合わせスペースにもなります、3階は寝室とサニタリーです。家全体がショールーム機能を兼ねているとのことですが、どこを見ても整然とすべてのものが整っています。決してものが少ないということではなく、こだわったものを選び、適切な場所に格納されています。
この家の大きな特長は構造にあるのですが、この細長い形状であるための制約条件がかえって魅力的な空間をつくり出しています。1階の構造は薄肉ラーメンと言って柱や梁型をつくらずに、壁の厚みの中をつかって扁平の柱にし、床の厚みの中で薄い梁をつくっています。というのも、この狭い間口で柱があっては、どうしても愛車を入れることができなかったからです。そして2階と3階は木造です。建物の重さを抑え、コストも抑えるためには木造にする必要があったそうですが、木造でありながらコンクリートと同じようなパネル状でつくったラーメン構造となっていて1階部分と同様柱型や梁が見えません。日本はもとより世界でも珍しい特殊な構造だということです。その特殊構造によって、家の内部には一切の柱や壁をつくることなく一続きの空間ができ、さらに構造から自由になることで、大きな開口やトップライトを設けることが可能になり、明るい開放的な空間が実現したのです。
このコラムの関連キーワード
公開日:2018年02月28日