多様化する時代に求められる、オフィスのオールジェンダートイレ

関心高まるオールジェンダートイレ

私が所属している「空間提案チーム」では、最新のトイレ機器から、多様なトイレ空間のプランやデザイン情報まで幅広く収集・蓄積し、建築用途や利用者属性に応じてアイデアをご提案・提供させていただいております。オールジェンダートイレもその一つで、最近、問い合わせが増えています。ある県では性の多様性を尊重した社会づくりを推進する条例が可決され、可能な限りオールジェンダートイレを設けることが求められるなど、自治体の動きも活発化してきました。また、オフィスのみならず商業施設や教育施設などのトイレ計画でも、オールジェンダートイレの設置が進み、具体的なデザインへの関心が高まっています。

オールジェンダートイレに関する取り組みのきっかけは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて、国が多様性への取り組みを推進したことでした。LIXILでもこの流れを受けて、2015年から海外のパブリックトイレの状況や性的マイノリティのトイレ利用についての調査を始めました。トイレは機能も重要ですが、トイレ空間に置かれたときに、それらの機器を利用する人にとって使いやすくなければ意味がありません。特に公共施設のトイレは多様な人が利用するので「使いやすいトイレ空間とは？」「利用者のニーズは？」などの意識調査を行いました。この頃よく聞かれたキーワードが“ダイバーシティ＆インクルージョン”です。個々のバックグラウンドの違いを受け入れ、認め合いながら新しい価値を創造する “多様性と包摂”という企業姿勢が問われ始め、オフィストイレにも関心が集まってきました。

私たちは、施設利用者ごとに異なるニーズやトレンドがあることを発信しながら、アイデアを提供しています。特にオフィストイレにおけるニーズの変化が著しく、働き方、働く人の属性も多様化しているので、トイレに対する意識や利用の仕方をよく理解する必要があると考えます。

LIXILでは2022年3月に「LIXILパブリックトイレラボ」というサイトを立ち上げました。「トイレへのアクセス」は基本的人権のひとつである」という強いメッセージを打ち出し、誰もが安心して快適に利用できるパブリックトイレはどうあるべきかについて、さまざまな視点から考え、ご提案しています。

今回コラムで取り上げさせていただいた関電不動産八重洲ビルの取材では、テナントの皆様のリアルな声を聞くことができ、とても参考になりました。オールジェンダートイレなどの新しい工夫が凝らされたトイレ空間は、世代によって受け止め方が異なっていましたが、早いうちに若い世代の考えが受容されていくのだろうと強く感じました。私たち「空間提案チーム」も、日々利用者の生の声を拾い上げ、アンテナを張る必要がありそうです。