窓上手のテクニック/Livearthリヴアース 大橋利紀の心地よく自然とふれあう住まいのつくり方

設計手法B 心地よさの見える化 2 昼光利用 導光手法の検討

過密・高層型立地では「導光」が効果的

「導光手法」は、吹き抜けや仕上げ面の反射、庭、障子などを利用して“間接的”に光を導く手法で、過密・高層型の立地で直接採光に制限がある場合や、望むような風景が得られない立地に向いています。
ポイントは、光を何に反射させ、どこまで入れるのか、光を入れたい時間帯はいつかを決めることです。
一方、過密型立地に比べると郊外型立地は選択肢が多く、窓を設置することで快適性を得やすいため、建築的手法満載にすると“うるさい建物”になってしまいます。
郊外型立地のポイントは、開口部の位置+導光手法でいかに風景を切り取り、光を導くか。
おすすめは、庭と空をつなげる位置に窓を配置することです。
周囲からの視線や見たくないものは落葉しない常緑樹でぼかします。
「織姫の家」
名古屋市内の過密・高層型立地にある狭小地。北側道路になっており、南は高層ビル、東西は3階建ての建物に隣接するため、北側にわずかに開いた空の抜けを切り取る窓を配置し、2階LDKにコーナー窓を配置。コーナーに窓を配置すると、目線が対角に誘導されるため「広がり間取り効果」が生まれる。コーナー窓から入った光は漆喰に反射して柔らかくなり、勾配天井を通じてロフトまで導かれる
「織姫の家」

さまざまな方法で光を間接的に導く

ここからは、具体的な導光手法をいくつか紹介します。

●吹き抜けを利用する

吹き抜けを利用した導光手法は、室内の奥まで照度を確保できる、明るさが均一になるといったメリットがあります。
ただし、明るければ明るいほどいいわけではないので照度を注意したいのと、夏の日射熱やグレア(眩しさ)の対策を合わせて行う必要があります。
「暁の家」
郊外型立地だが、北側・東側の2面に接道し、南側は隣家と倉庫、西側は隣家が近接し日照条件的には不利な要素も多かった。接道越しの北側・東側の空に視線の抜けがあったので、北・東・南にそれぞれ表情の異なる庭を配し、各庭が室内空間と連続するように窓を計画。南東の角は、吹き抜けと頂側窓、腰窓を重ねることで導光と視線の抜け、冬場の日射熱取得を同時に叶えた。庭が、周囲からの視線を遮りながら行き交う人に緑をお裾分けする
「暁の家」

●頂側窓を利用する

頂側窓(ハイサイドライト)を使った導光手法は、隣棟間隔が狭い敷地で効果的です。
照度の均一性は高いものの、側窓に比べると床面はやや暗くなります。
「暁の家」の西棟(店舗併用住宅の事務所)
南側は倉庫が隣接し、日射も風景も期待できない。唯一抜けがある東の庭とわずかに残された空からの光を頼りに窓を配置した。東西南北の吹き抜けの角8カ所に設けた頂側窓が1日を通じて安定した光を導く。事務所での集中力を高めるのにも効果的な光となる
「暁の家」の西棟(店舗併用住宅の事務所)

●仕上げ面の反射光を利用する

仕上げ面の反射光を利用する場合のポイントは、何に反射をさせるかに尽きます。
内装壁・天井の漆喰や木、ウッドデッキ、軒天など、仕上げ材の素材・色により反射の仕方、光の硬軟が変わるからです。
木材の素地などマットな仕上げは温かみのある印象に、鏡面仕上げはシャープな印象に。
反射率[下表]を参考にしつつ、どういう空間にしたいかによって反射させる素材を選ぶとより効果的な導光が実現できます。
仕上げ面の反射光を利用する
「大真屋の家」
過密型立地に建つ事務所併用住宅。土地は約90坪と広大だが、東側に8台分の駐車スペースがあるため、居住空間はそこまで大きくなく、わずかな庭とデッキ空間を重ねて配置した。東側から入る光をデッキ材、軒天の反射を利用して導光することで陰影のある室内空間を目指した。内部は[ダイニング→リビング→キッチン(水回り)→畳の小部屋]がつながる回遊性のある間取りとし、導光結果の違いにより、それぞれの部屋で陰影と居心地の違いを楽しめる
「大真屋の家」

●障子や地窓を利用する

障子は、直接光を拡散する働きがあるため、柔らかい光環境をつくると同時に外からの視線を抑えてくれます。
地窓は、床に反射した光を天井に拡散します。
植栽を配置してフェンスなどで敷地を囲うことで限られたスペースでも情緒性を高めることができるため、風景的な利点が少ない立地におすすめの手法です。
「清洲の家」
過密型立地にある離れをセカンドライフの中心的な居場所としてリノベーション。東西南北が住宅に隣接しているため視界の抜けは期待できず、特に南側は細い道路と隣家があるため大きな窓を設けることができない。唯一残された西側の庭に開く間取りとし、セカンドリビング・ダイニング・書斎をL型に配置し大きな掃き出し窓を設置。条件のあまりよくない南側に坪庭をつくり、障子付きの地窓を設けて導光とプライバシー、情緒性を同時に実現した
「清洲の家」

昼光利用の仕上げとして照明設備を計画する

リヴアースでは、昼光利用のステップ1〜3を踏まえた上で、室内の照度シミュレーション[下図]を行い、ここで初めて照明設備の検討に入ります。
昼光利用の仕上げとして照明設備を計画する
照明設備については、いくつかの社内ルールを決めています。
・「1灯型」でなく「多灯分散型」で計画する。
・ペンダントライトを除き、原則天井に照明をつけない。
・調理、読書、勉強などのタスク(作業)が発生する場所には照度を確保するための照明を配置する。
・意図的に「陰」をほどよくつくる。
・「明るさの感覚」は人によって違うため、その感覚を施主と共有する。

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