地域振興の拠点として期待される「道の駅ましこ」(栃木県芳賀郡益子町)

道の駅建設までの経緯

施設の設計はマウントフジアーキテクツスタジオ。八溝杉の集成材でできた山形の梁は、大空間を温かみのあるものにしている。益子町内の工務店が製作した陳列棚には、県内でつくられた手作りの工芸品が並ぶ

益子町にはかつての村の単位を継承する3つのエリアがある。北に七井地区、中央に焼き物の里の益子地区、南に道の駅がある田野地区。中でも農業が盛んな田野地区は、以前から農産物直売所の設置が望まれていた。
1999年の地域活性化計画で一度は検討されながら、具体の話がなかなか進まなかった。大塚朋之氏が町長になった2010年頃に、直売所のひとつの形態として「道の駅」が検討され、2011年に建設委員会を設置。設計者選びは「県も含めた益子の地場産材を使ってくれる方と仕事がしたい」との町の要望から、公募型プロポーザルとした。
益子町役場の農政課で計画段階から関わり、現在は「道の駅ましこ」の広報リーダーを務める山_祥子さんは当時を振り返ってこう語る。
「益子町では3年に一度開催される芸術祭“ 土祭 ひじさい ”という取り組みを通して、地元の陶芸家や左官、木材業者など、まち並みを構成する素材に関わる人々とのつながりを強く持っていました。プロポーザルで採用されたマウントフジアーキテクツスタジオさんの考え方は、こうした人々と価値観を共有できるものでした」。
建築を印象づける最長16mもの木骨の材料には「 八溝杉 やみぞすぎ 」という杉材が使用されている。木目が美しいだけでなく、狂いにくく、曲げに強いということから、古くから建築用材として使われてきた地元の材だ。この施設を支える梁はすべてこの八溝杉の集成材で作られている。
また、ヴォリュームのある建物を周辺の景色にどう溶け込ませるかという点でも、彼らの案は優れていた。建物が立地する場所は、周囲に水田や畑が広がる田園地帯。遠くの山の稜線にそろえた山形の屋根の起伏を、3列にして少しずらすことで、奥行きのある屋根の表情が生まれた。また、建物南北の大きなガラス面は景色を映し込み、周囲にすっかり溶け込んで見える。
「夜は建物の光が外にもれるのですぐにわかりますが、昼間はどこにあるのかわからないと言われたことがあります。あたかもここから生えてきたような、里山の景観になじむデザインは、町民からも高く評価されていると思います」(神田支配人)
建築だけでなく、ランドスケープデザイン含めて彼らが監修したことで、統一感のある心地良い空間が生み出された。

道の駅ましこ 外構図__提供/道の駅ましこ
営業時間は、ましこのマルシェが9:00?18:00、レストランが11:00?17:00(ラストオーダー)、ましこのコンシェルジュは9:00?18:00。
道の駅ましこ 平面図__提供/道の駅ましこ
道の駅ましこ 立断面図__提供/道の駅ましこ

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公開日:2017年07月31日