INTERVIEW 010 | SATIS
街に開く、自然とつながる、仕事場付きアパート
設計:仲俊治+宇野悠里/仲建築設計スタジオ(五本木の集合住宅)
機能をつかって居場所を誘発する
この家のキッチンや水回りはあえて隠そうとはしていません。むしろ積極的に外に出ているようにも見えます。このことを仲さんはファシリティをつかって人の居場所をつくり出すと言っています。洗面が外にあったり、打ち合わせスペースとキッチンが一緒だったりと、ファシリティがあるから人はそこに寄ってきたり、その周りで振る舞いが起きるというのです。このことは仕事場と住宅が一緒になる仲さんの提案する暮らし方では重要な意味がありそうです。
1階のユニット
1階は3つの「仕事場つき住宅」としてつくられていますが、現在は仲さんのご両親が2つのユニットをつなげてお住まいになり、自宅でお仕事をされるお父様が事務所としてもつかっています。将来はいつでも界壁をつくれるように設備配管などもあらかじめ組み込んでいます。
ご両親の水回り空間
トイレやキッチンをプライベートなものせずに、来客の人も使っていいようなしつらえにすることは「仕事場がついている住まいというコンセプト」では大切な要素だと仲さんの住宅部分でも触れました。この賃貸部分でもそのことは課題です。ここではその解決策として事務所側からも寝室側からもトイレにいけるように2WAYになっています。さらにトイレと一体につくることでスペースに余裕ができています。隠すのでなく、積極的に使うということがここでもなされています。また将来車椅子などを使用するようになっても便利だろうとも言います。
窓とルーバーについて
この家では大きな開口部や吹き抜けなどをつくりながらも、様々な工夫をし、またその検証を下の絵のようにシミュレーションして高性能な居住空間を実現させています。夏にはどこの窓から風をいれて、その風がどこをぬけていくかを精密に検証しています。また窓は全て木製で気密性も断熱性能も高いエアータイトの窓が使われています。ちなみにこの家ではUa値0.50、C値0.27という断熱や気密に対して高い性能を実現しています。ルーバーの高さや幅など、また窓の高さや位置を検討して冬には家の中まで光がはいり、夏には日差しを遮り、涼しい風が通り抜けるようになっています。そのことで冬でも晴れてさえいれば暖房をいれずに快適に過ごすことができるそうです。
特に断熱の話では、施工方法に関する話が印象的でした。通常一般的に使われる気密フィルムで覆われた「耳付きの断熱材」では施工現場でカットして使うため隙間が出てしまうのだそうです。たしかにここは盲点です。断熱材と気密シートを別にして、断熱材を隅々までいれ、その上で気密シートそれも丈夫なものを貼るという方法が仲さんの事務所では昔から標準仕様になっています。
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公開日:2018年03月31日