INTERVIEW 007 | SATIS
ピクニックをするように暮らす家
設計:中山英之/中山英之建築設計事務所 | 建主:金子敦・泰子さま(グラフィックデザイナー)
建主はご夫婦で共にグラフィックデザインをされる金子敦さん・泰子さん。建築家の中山さんとは同世代であり、紹介された時から是非この人にと思ったようです。この建物はオフィス兼住居で、それまでオフィスと住居を別々に持っていたのですが、住居とオフィスを一緒にしたいと考え始めたのがリーマンショックのあと、賃貸でオフィスも家も借り続ける暮らし方にどこか不自然さを感じていました。そして決定的にそう思うようになったのが震災の時だそうです。家まで帰れないことや、堅牢な家の重要性など、そして働くところと暮らすところを分けないで暮らしたいと思い、土地を購入したといいます。
ピクニックのように
家のかたちは楕円形でそこに幾つかの平面を突き刺したような床面で構成されています。壁から突き出た床面「弦と弧」をつくり出し、地下1階から2階の天井まで吹き抜けになっています。申請上は地上2階建ての家なのですが、平面のレベルにステップがついていて、内部の床が幾重にも重なって迷路のようにさえ見えます。平面と平面をつなぐ階段もどこにあるのかわからないものもあり、すぐそこに見えている場所への行き方がわからなく一瞬戸惑ってしまいます。こうした空間のつくりかたを中山さんは「場所と場所の関係性をあえてわからなくすることで住む人が主体的に自分の居場所を見つけていくことができるようにしたい」と言い、そのことをピクニックにたとえています。美しい自然があるとピクニックがしたくなりますが、どこにシートを敷いて座るのかは、人が決めること。そうした自然と人間との関係が、家でも同じように、家が住む人の暮らしを規定しないようにつくりたいと考えています。
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公開日:2018年01月31日