INTERVIEW 004 | SATIS
建主の心地よさを読み解く
設計:関洋/SEKI DESIGN STUDIO | 建主:Uさま
建主のUさんが関さんと出会ったのはすでに10年以上前、関さんの作品展を見に行ったのがきっかけだそうです。それ以来、関さんが行うオープンハウスに何度か足を運び、もし家をつくる機会があれば是非頼みたいと思っていたようです。Uさんは建築にも造詣が深く歴史的な名建築などを見に海外旅行されることもあるそうです。また絵画や彫刻のコレクションも多く、家の計画に当たっては、それらのコレクションを適材適所におきたい、その定位置を設計してほしいというのもひとつの要望だったそうです。
たしかに完成された家の様々な場所にはコレクションがぴったりと収まっています。
1階は書斎、寝室、水まわり、2階はリビング、ダイニング、キッチン、そして3階が納戸。トイレは2階と3階の2か所にあります。内装の壁、天井は石灰と珪藻土を調合したオリジナルの左官仕上げです。自然なコテの跡が全面を覆い、塗り壁の柔らかな質感が家全体を包んでいます。
余白を考える
この家で最も特徴的な場所は、2階のリビングとダイニングとキッチンの間の場所です。そこは何もない空間になっています。トップライトの光が壁に影を落とし、壁のテクスチャーと重なりながら、刻々とその表情が変化していきます。眺めていると時間を忘れそうです。特に何かの目的をもった空間ではありませんが、その余白があることで他の空間の存在を引き立てています。こうした余白とも言える場所がこの家にはいくつもあるのです。
「その人らしい」ということ
建物は住み手のためにあります。関さんは、建主との会話から建主の潜在意識や身体感覚を読み解いていくと言います。その人にとっての心地よさを探していくのです。それは建主の要望に単純に応えるのとは違うと言います。建主の好みや気持ちを思考しながら、建築や空間のプロポーションや素材を整えていくのだそうです。そして建主自身でも気づいていないような「心地よさ」に出会えた時、その空間が「住み手らしさ」となるそうです。先ほどの余白の空間はまさにそのようにしてできたのだと。関さんは自分の作風を決め込むのではなく、あくまでも建主に意識は向いています。それは関さんというフィルターを通して、その建主自身が作っているとも言えます。こうしてできたこの家はUさんの暮らしぶりであり、「らしさ」となっていくのです。
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公開日:2017年12月25日