INTERVIEW 004 | SATIS
建主の心地よさを読み解く
設計:関洋/SEKI DESIGN STUDIO | 建主:Uさま
シーンを切り替える
迷宮のような感じをつくりたいという要望もあったそうです。迷宮とは、ひとつの空間の先に何があるかわからないということ。次にどんな空間が現れるか期待が生まれるようなものだといいます。この家では階段や廊下など、場と場をつなぐところを意識的につくっています。そしてその場所にはかならずUさんの気に入ったアートコレクションがあるのです。その「間」が、そこを通る人の意識に、次の場所への期待感を作り出すのです。
空間と対話をする
実際に生活しはじめてからの感想も伺いました。特にダイニングテーブルの上の照明についての話しは印象的でした。それまでの家ではルイスポールセンの照明を使っていて、光が絞られテーブルの上だけを照らすその感じが気に入っていたそうです。しかし、関さんが提案したのは写真のようにもう少し大ぶりなもの、そして光もテーブルの上だけでなく周りを照らすものです。空間が今までより大きくなったので、この照明を勧めたそうです。はじめは違和感があったと言いますが、少し慣れてくるとその感じがとても心地よくなってきたと言います。このように建主の経験してきた感覚をこえた喜びを生み出すこともデザイナーの醍醐味なのでしょう。
また、この家には前述したように様々なアートコレクションが置かれています。今はこの壁に何を置こうかと迷っている場所もあるようで、壁を眺めながらじっくり考え、空間と会話をするように家を読み解いていくことは、Uさんにとってとても楽しい時間のようです。
窓と照明
この家にはあまり窓がありません。紫外線が苦手だという奥さまの意向もあるのですが、そのために設置される窓は慎重に計画されました。その窓からどこをどう眺めるのか、高さや大きさ、位置など何度も検討したそうです。それぞれの窓から入る光が大きな壁面をやさしく照らし反射し、どこにいてもやさしい光で包まれています。塗り壁の仕上げと相まってその壁自体がアートのようになっています。照明もすべてが間接照明となっていて光源は目には見えません。光と影、この陰影が空間の奥行きをさらに増しているようです。
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公開日:2017年12月25日