INTERVIEW 002 | SATIS
視線が暮らしを変えていく
── 内と外の家
設計:藤原徹平/フジワラテッペイアーキテクツラボ | 建主:幸和ハウジング株式会社さま
SE構法の家
この家は浜松にある幸和ハウジングの分譲地のなかにあるモデルルームです。特定の住まい手がいない家ですが、そのことでより純粋な藤原さんの考えが実現しているとも言えます。この構造はSE構法という木構造です。木造でありながら大スパンをつくれる構造体です。その構造をつかって下の絵のようにダブルグリッドという考え方を生み出しました。平面的には十字形に断面では1階と2階の間にもう一つのグリッドが挟まっています。構造的に必要な壁を幅の広い方のグリッドにいくつかつけるだけで、中央の十字の部分は壁をまったくなくすことができるのだそうです。そのことでたくさんの穴の空いた箱が生まれ、窓も自由に開けることができるようになり、また家の内部には壁のない空間をつくることができました。上の写真のように1階の個室上部と2階のリビングがつながっていたり、さらに少し上がったフロアーのキッチンやダイニングともひとつづきの空間になっています。様々な場所に隙間がうまれることで、自然と空間と空間がつながっていくのです。
家具のようなトイレボックス
トイレを仕切る壁は天井までのばさずにパントリーの壁と一体にしてボックスのように作っています。建築の壁天井から縁を切ることで、家具のようにどこにでも置けるような形態を考えたそうです。実際にはキッチンもトイレも配管があるので後から自由に動かせるというわけではありませんが、将来必要であれば位置の変更をすることは可能でしょう。そして実際の可変性もそうですが、視覚的に可変しやすいように見えることも大事な要素だとも言えます。家を主体的に住み、自分で可変していく意識がより家を永く使っていくことになるからです。
中間領域再考
内と外をつなぐ中間領域をどうつくるかがこの家のテーマでもあり、藤原さんが常日頃住宅について考えていることです。かつて日本の家の空間文化としてあった縁側は、現在ほとんど姿を消しました。大学で学生に聞いても縁側で寝転がった経験のある人はほとんどいなくなったそうです。そのことに藤原さんは強い危機意識を持ちます。なぜならその中間領域は家の内と外へとつなげる大切なエレメントであり日本の住まいかたの文化だからです。かつての家は縁側だけでなく通りに面したところには「店」という商いを行う場所や「土間」「通り庭」という半外部の内側の場所がありました。それは内の中から外の気配を感じる場所でもあり、外からも家の中の気配を感じられるような場所が存在していたのです。
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公開日:2017年11月30日