LIXIL×大成建設
タイル壁面で街区に統一感をもたらす「なんばパークス サウス」の建築デザイン
2023年7月1日、大阪ミナミ・なんばパークス南側の再開発エリアに「なんばパークス サウス」がグランドオープンしました。
時間貸駐車場として利用されていた敷地面積約9,000m2の土地に、センタラ ホテルズ&リゾーツ・大成建設・関電不動産開発・南海電気鉄道による難波中二丁目開発計画がスタート。大阪市内のターミナル拠点開発では梅田の再開発に次ぐ規模といわれるこの再開発では、2つのホテルやオフィス、駐車場からなる3棟のビルを歩行者デッキでつなぎ、隣接する商業施設「なんばパークス」と連携した一体的な街づくりを目指しました。
ここでは、3棟の建築設計を担った大成建設設計部の皆さんに、外装デザインの重要な要素として使用いただいたLIXILのタイルを中心に、建物のデザインコンセプトや、素材としてのタイルの魅力についてお話をいただきました。
参加者 大成建設株式会社
塩谷尚斉氏(設計本部 建築設計第一部 部長)
中野 弥氏(設計本部 建築設計第一部 シニア・アーキテクト)
丹下幸太氏(設計本部 建築設計第一部 プロジェクト・アーキテクト)
難波中二丁目開発計画の概要
──開発計画の概要をお聞かせください。
塩谷氏:今回の計画は、株式会社ニッピ様が所有する駐車場だった敷地を3分割して、定期借地権を設け、それぞれの事業主様の要望に応じた建物を建てるというかたちでスタートしました。
一番大きなA敷地には、タイを代表する高級ホテルチェーン「センタラ ホテルズ&リゾーツ」が日本に進出したいという情報を得て、我々がタイに乗り込み直接交渉したところ、この開発計画を非常に気に入っていただき、とんとん拍子で話が進みました。日本初上陸となる「センタラグランドホテル大阪」は、約150mの超高層で、特徴あるインテリアデザインを売りにしたレストラン&ルーフトップバーを最上階に設けた客室数515室のホテルです。
次にC敷地では、なんばエリアの根強い観光需要を捉え、建物ボリュームを抑えてA敷地ホテルとの住み分けができるホテルを計画しました。ホテル京阪様がライフスタイル型ホテルの開発を展開したいということで、227室の「ホテル京阪 なんばグランデ」が実現しました。
最後にB敷地は、従前からの駐車場需要と一定のニーズが見込めるオフィスビルの構成で南海電気鉄道株式会社様が開発され、一般貸駐車場を間に挟んだ14階建てのオフィスビル「パークス サウス スクエア」が完成しました。
この計画は高容積率を獲得する都市再生特区制度を採用していないため、街区整備に対する法的縛りが緩やかであり、A、B、C敷地それぞれの事業者の思いを形にしていくプロセスは比較的スムーズに進みましたが、逆に強い都市計画的規制がないため、設計者としては街としてのつながりや全体感が欠落しないよう常に意識して各計画を進めました。幸い計画地の北側には大阪球場の跡地にできた「なんばパークス」という素晴らしい複合商業施設があり、その緑と賑わいを意識しつつ、当街区も全体の統一感を持たせた街づくりをしたいという提案をさせていただいたところ、各事業者様よりご賛同いただき、低層部や歩行者空間は統一性を持たせたデザインにより建物同士の連携を深めていくことになりました。
低層部にタイルを用いた理由
──タイルの壁面が非常に印象的ですが、どんな意図がありますか。
塩谷氏:大阪のまちを歩くとわかりますが、タイルを使った建物が多いことに気付きます。その使い方はさまざまに工夫されており、大阪の街の近代化や歴史観を象徴するものと言えます。また、隣接する「なんばパークス」は2003〜2007年にかけて竣工した施設で、大峡谷をイメージした特徴的な外観デザインになっており、低層壁面は地層を模したデザインになっています。2014年アメリカCNNの「世界で最も美しい空中庭園トップ10」に選出されるなど、大変話題になりました。
そこで今回、新しくつくる街区においても、低層部においてはやはり特徴的なタイルを用いて、新しいまちのイメージを創り出していきたいと思いました。「なんばパークス」が竣工しておよそ20年経ちますから、その時の経過を表しつつ「なんばパークス」との関連性を表現したいと考えました。設計チームで議論を重ねながら、現在の楽し気なまちに対して、少しクールなイメージにした方が新しい時代の特徴が出るのではないかということで、それにふさわしいタイルを探していく中で出会ったのが「還元焼成タイル」です。窯内の酸素をできるだけ抑制した状態で焼くことで、偶然性、偶発性のある焼き物独時の味わいとムラのある色のタイルができます。「現代の多様性の時代」にふさわしい表情にチームのみんなが気に入り、今回使用するタイルに決めました。
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公開日:2023年10月16日