東京ミッドタウン八重洲×LIXIL
敷地の土で焼いた「八重洲焼きタイル」で
土地の記憶を刻む
参加者
喜多淳子氏(株式会社竹中工務店東京本店 設計部 情報技術部門 BIM推進グループ 主任)
川内 賢氏 (株式会社竹中工務店東京本店 設計部 設計第1部門 設計1グループ 主任)
横川充彦 (株式会社LIXIL WATER TECHNOLOGY JAPAN 営業本部タイルチャネル営業部 プロジェクトタイルアカウントG第1チーム チームリーダー)
三井不動産株式会社が都心部で進める街づくり「東京ミッドタウン」の3施設目となる『東京ミッドタウン八重洲』では、敷地から出る建設発生土を使ってタイルを焼き、それを「小学校のファサード」や「八重洲ウォークの塀」に使うことで“土地の記憶を刻む”というユニークな試みが行われた。
SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献するこのアイデアを提案したのが、株式会社竹中工務店設計部の担当者。決められた工期の中で実現させるには、再開発組合の了承を得る必要がある。先ずは皆に興味を持ってもらおうと陶芸イベントを企画し、プロジェクト関係者の親睦をはかりながら、「パートナーシップで目標を達成しよう(SDGs17)」といった心意気で取り組んだ。
LIXILのやきもの工房とタッグを組んでタイル製作の試作を繰り返しながら挑んだ「八重洲焼きタイル」はついに完成し、2つのエリアに施工された。
ここでは「八重洲焼きタイル」プロジェクトの中心となった設計担当のお二人と、タイル製作を支えたLIXILの担当者にお話を伺った。
東京ミッドタウン八重洲の概要
──東京ミッドタウン八重洲の概要からお聞かせください。
川内氏:東京ミッドタウン八重洲は、東京駅の八重洲側、外堀通り・柳通り・あおぎり通り・八重洲通りに囲まれた場所にあり、敷地面積約12,390m2、地下4階、地上45階の事務所、店舗、ホテル、バスターミナル、小学校などが入る再開発ビルで、2022年8月に竣工しました。
竹中工務店は、実施設計から参画しました。
再開発ビルが立地する八重洲二丁目北地区は、オフィスビルや銀行、中央区立城東小学校があった土地でしたので、小学校は地権者として再開発ビルの一角に入っています。小学校の入口は敷地南東部の柳通り側にあり、ビルの1〜4階と、4階の屋上を利用しています。4階には開閉式の屋根を備えた校庭があり、屋上には菜園と水田が作られています。
敷地の土を記憶として生かす試み
──「八重洲焼きタイル」が生まれた経緯についてお聞かせください。
喜多氏:私たち設計者は常に、自分が関わったプロジェクトに何かを残したいと思って仕事をしています。今回のプロジェクトが始まるときも、社内で「やってみたいことはないか。取り組みたいことはないか」といった話し合いの場がありました。そこで私はやってみたいこととして、「建設発生土を使って焼いたタイルを建物の仕上げ材としたり、アート製作に利用したりすること」を取り上げてみました。
掘削工事をしている段階で発生する土は、廃棄物として扱われ、搬出先の環境に大きく影響を与える要因の一つとなっています。それを少しでも減らし、活用することでSDGs的な取り組みにつながらないかという発想に結び付きました。
工期4年の中で土が見られるのは最初の1年だけです。処分されて無くなってしまったら何も出来なくなるので、先ずは土を確保しなければなりませんでした。
「八重洲焼きタイル」立案時は、まだ建物の完成イメージが固まっていない段階でしたが、地下掘削時に発生した土を確保し、タイルを製造する工場に運搬することからスタートしました。焼いたタイルをどこに、どの様なデザインで取り入れるかといった提案は、その次にならざるをえませんでした。
計画を実現するためには、関係者の皆さんに提案に興味を持ってもらうことが課題となりました。そのために八重洲の土を使って作る陶芸イベントを企画し、皆に参加してもらって、「プロジェクトに携わった思い出の一品」を作っていただきました。
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公開日:2023年01月25日