業のやきものの時間のなかで
日本六古窯・常滑でつくるSATIS
小栗康寛(とこなめ陶の森 学芸員)×神谷政武(LIXIL)×百瀬和巳(LIXIL)
『コンフォルト』2018 October No.164掲載
1000年前から続く6つの古窯、常滑・瀬戸・越前・丹波・信楽・備前。
なかでも常滑は芸のやきものだけでなく、時代や社会のニーズに応える業のやきものをつくってきました。そのスピリットはLIXILの衛生陶器づくりにも貫かれています。
土管や建材をつくってきたまちの歴史
1000年前から時代のニーズをとらえ、使いやすいかたちを
「とこなめ陶の森」の資料館に入ると、ホールに直径が1メートル前後あるやきものの
「知多半島はやきものの材料となる良質の土があったこと、また窯を形成しやすい丘陵地であったこと。さらに海に囲まれ、船で物を運べるという3つの条件に恵まれていました」。中世の頃には知多半島全域に2000∼3000の窯が分布していたそうだ。「それが鎌倉時代中頃から海運に便利な伊勢湾沿岸部に密集し、常滑は甕、壷、鉢を専門につくる窯業地に変わったのです」。
甕は肩まで土中に埋めて酒の醸造、藍染めなどに使われ、さまざまな液体の貯蔵容器として各地で利用された。肩が膨らんだ形状は時代により異なるが、底部が小さくすぼんだ形は共通している。内容物を最後まで
「時代のニーズをとらえ、使う側の視点に立ち、どのように使われるのかを強く意識してつくられてきたのが常滑焼の特徴です」と小栗さんがまとめてくれた。明治時代に入ると、そのスピリットによって人々は精度の高い土管を木型で量産する技術を開発し、常滑は土管の有力な産地となった。建築材料のタイルも生み出した。現在、LIXIL
とこなめ陶の森/資料館で学ぶ
「とこなめ陶の森」は常滑・常石神社の鎮守の森に散策路を設け、その西側に立つ資料館、陶芸研究所、研修工房の3施設で構成されている。陶芸研究所(1961年)の設計は、堀口捨己。
資料館(1981年)には国の重要有形民俗文化財に指定されている常滑の陶器の生産用具(1655点)及び登窯(1基)のうち、300点が展示されている。
愛知県常滑市瀬木町4-203
開館 9:00∼17:00 休館 月曜
http://www.tokoname-tounomori.jp
tel 0569-34-5290
レンガの煙突が並ぶ昭和の常滑
榎戸工場の神谷
「型から抜いた素地のときから乾燥までの工程で、3パーセントほど収縮します。さらに焼成によって10パーセントほど、合計で約13パーセント収縮します」。乾燥には30時間以上かける。「急激に乾燥すると素地の内部が生乾きになり、割れてしまいますから」と神谷さん。衛生陶器は土と空気と火との微妙なバランスを維持しながら、つくられていることがわかる。
LIXIL榎戸工場(常滑)で衛生陶器の製造工程を見る
榎戸工場はLIXILの衛生陶器を製造する主力工場で、洋風便器、タンク、洗面器、手洗い器、小便器を製造。衛生陶器は1945年から常滑駅前の本社工場で製造されていたが、70年に榎戸工場に移った。工場の敷地面積85,000㎡、社員数は約400人。製造工程は原料の泥漿の製造から、鋳込み成形、乾燥、選別、施釉、焼成、検査など。
洋風便器の成形工程
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公開日:2019年05月29日