INTERVIEW 009 | SATIS

カラフルなリュックサックのような家

設計:鈴野浩一・禿真哉/トラフ建築設計事務所 | 建主:飯島雷一朗・麻奈美さま

大きな余白

引き離された2つの箱の間に大きな土間が生まれました。2階部分が屋根にもなり日差しも遮ってくれます。外に開かれた場所でありながら屋根があることで落ち着いた居心地の良い空間が生まれています。子供たちが遊んだり、友人を呼んでバーベキューをしたりと、この空間をとてもうまく使いこなしています。周りは広大な芝生になっていますが、この少し囲まれた場所がとても落ち着くのだそうです。一方2階には、1階の2つの箱の上部に大きなテラスが生まれました。このテラスも楽しい空間になりました。これからどんな風に使っていくのか構想中とのことです。

1階に出来たピロティー

1階に出来たピロティー、昼間はかっこうの子供の遊び場になる。時にはここでバーベキューをやることも。

1階の上部が広いデッキとなり、玄関前の空間に大きな余白が生まれた。

1階の上部が広いデッキとなり、玄関前の空間に大きな余白が生まれた。

もう一つのブロックの上部のテラス

もう一つのブロックの上部のテラス。外の田園風景はいくら眺めても飽きないという。

色を部位に使っていく

はじめのオーダーであったカラフルなリュックサックのイメージをどうつくるか。禿さんは空間全体を色で囲むのでなく、横方向の壁面に、または扉に、または天井にというように、部位に違う素材や色を配置していきました。特にリビングの壁面は、飯島さんご夫妻がお気に入りのスウェーデンのメーカーの壁紙をご自身で選んでいます。パッチワークのように様々な色や素材が混じりながらも、それらがバランスよく調和されています。

キッチン側からリビングダイニングを見る

キッチン側からリビングダイニングを見る。右側の窓からいちょうがよく見える。
photo: Daichi Ano

緊張しすぎないということ

飯島さんご夫妻にとって、すべてがつくり込まれた家は緊張して落ち着けないそうです。この家はカラフルな色や素材がどこにいても気持ちを楽しくしています。また空間に余白があることによって、色々なものがあとから置かれてもそれらを許容してくれるといいます。
友人が来てもとても気持ちが良いと長居をするそうです。窓から見えるいちょうの木や遠くまでつづく野菜畑、大きな空、そして緑などゆるやかな時間が流れていきます。風景を2階から見るというのがこんなに心地よいものかと気付かされます。外を見ながら時間を忘れそうです。部屋を見渡すとキッチンには調理道具と調味料がたくさん置かれています。麻奈美さんは「料理はつくるのは面倒だけれど、美味しいものをどうしても食べたい。私は食いしん坊なんです。」と。そのためには料理は自分でつくると言っていました。そういう麻奈美さんですが、実は彼女自らブータン料理のレストランも経営しているグルメなのです。

リビングダイニングを見渡せるオープンキッチン

リビングダイニングを見渡せるオープンキッチン。美味しいものを食べたいから料理は自分でつくるという。

様々な料理道具もあえて隠さず使いやすい場所に置かれていた。

様々な料理道具もあえて隠さず使いやすい場所に置かれていた。

飯島さんのコレクション

飯島さんのコレクション、後から色々なものを足してくのが楽しみだと。居心地の良い椅子やテーブルが置かれていた。ここは1階のアトリエ。子供の遊び場にもなっている。

取材の後、お子さんが育てているトカゲの餌のコオロギ獲りを披露してくれました。毎日の日課だそうで、地面から飛び跳ねたところをひょいとすくいあげます。見事な手さばきでした。冒頭に触れたように、これまで都会で育ち暮らしていた麻奈美さん、初めは田舎に住むことに戸惑いがあったようですが今ではすっかり自然豊かなここでの暮らしに満足しています。ご両親も隣に住んでいて安心ですし、子供の成長とともに、また歳を重ねるごとにきっと様々な変化をしていくことでしょう。

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公開日:2018年02月28日