箱根本箱とSATISの「okomori」な関係。
岩佐十良(クリエイティブディレクター)×海法圭(建築家)×ブックディレクター(染谷拓郎)
『自遊人』 2019年2月号掲載
随所におこもり空間を設け「こんなところにも」「あんなところにも」という声が聞こえてくる『箱根本箱』。実は、「この場所こそ最たるおこもり空間!」という思いから、トイレには〈INAX〉の『SATIS』をセレクト。導入の理由など、プロジェクトメンバー3人が語ります。
プロジェクトメンバー
クリエイティブディレクター 岩佐十良
建築家 海法 圭
ブックディレクター 染谷拓郎
箱根本箱はわくわくと落ち着きを秘めた、大人の「秘密基地」。
随所に散りばめた「おこもり空間」は、全部で9、10、11……
岩佐:
8月1日の真夏の開業から季節は冬へ。本を読むにも最高の「おこもりシーズン」がやってきました。
染谷:
インスタにもおこもり空間を上げてくれる人がたくさんいて嬉しいですよね。
岩佐:
はい。いいスタートダッシュを切ることができました。箱根にも新しい宿が続々とオープンしている中で、すでにリピートのお客様もたくさんいて。その理由として、やはり本の選書が非常によかったことがあげられると思うんですよね。
Okomori
染谷:
実際に建物と本のしっくり感みたいなのが生まれて本当によかったと思っています。驚いたのは、購入してくださる方がとても多いこと。1組あたり2・6冊、購入単価の平均も全国の書店平均の3倍強で、超異常値なんです。
岩佐:
それだけピンとくる本と出会えてもらえているのが嬉しいですよね。僕から染谷さんにお願いしたことはひとつ。最近、本を読んでいないなぁという人でも、すっと入り込める軽い感じの本にしてくださいということでした。
染谷:
「本との出会い」「本のある暮らし」という全体のコンセプトのなかで、生活に密着しつつ日常から非日常までを括れるテーマを考えました。そこから生まれたのが「衣・食・住・休・遊・知」の6つのジャンル。ロビーのメイン本箱の1階は日常に近い衣食住、2階に上がるにつれレイヤーをずらして非日常の遊休知へと誘う。そんな感じです。
岩佐:
その“誘う本箱作り”を含めて、海法さんに設計をやってもらったわけですが、僕の顔をもう見たくないでしょっていうくらい現場は壮絶でしたよね (笑)。
海法:
(笑)。設計者としてはお客様に来ていただけて、本も購入してもらい、ほっとしています。僕は里山十帖でも一室、設計しましたが、その時から岩佐さんの「ホテルもメディア」という思いは一貫していました。箱根本箱も一冊の雑誌を作り上げるように、膨大なインプットの中から編集して作り上げていくやり方は、すごく勉強になりました。
岩佐:
「メイン本箱にも、おこもりスペースを作って欲しい」とか、だいぶ難題を押し付けたけど……。でも、ブックホテルでの過ごし方を考えた時、僕のなかでは人がわくわくするおこもりスペースを作ることはすごく重要だった。
海法:
本と人の出会いの風景自体がインテリアになるように考えました。本と人の自由な関わり方を許容する余地のようなものを作りたかった。おこもりスペースはまさにその余地になったなと。
岩佐:
結果、空間の一部になり、ユニットになっていていろいろな構造体になれる本箱を作ってくれた。僕はロビーの本箱は、素晴らしい建築になったと捉えています。
海法:
本屋だと思ったらホテルだった。今回のような曖昧なプログラムの空間ってこれからもっと増えていくと思うんですよ。現にオフィスっぽいカフェ、本屋のようなコミュニティスペースとか増えてますよね。
染谷:
そこ、すごく共感します。僕らも駅前の本屋を作るのとは違いましたから。ホテルの中で本に出会って、本と過ごして、しかもその本を買って帰れる空間。設計も選書も、根本の考え方は同じですよね。
岩佐:
とはいえ染谷さんは本マニアが来て、「選書が浅い」とか言われる危惧もあったのではないですか。
染谷:
そうですね。でも、そういう声は全然ないですね。
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公開日:2020年01月29日