箱根本箱とSATISの「okomori」な関係。
岩佐十良(クリエイティブディレクター)×海法圭(建築家)×ブックディレクター(染谷拓郎)
『自遊人』 2019年2月号掲載
形だけがデザインではない
岩佐:
ところで、客室のおこもり空間としてインテリアにこだわったのがトイレ。僕はトイレこそ、最たるおこもり空間だと思っていて、箱根本箱はライフスタイル提案型のホテルでもあるので、そこも徹底的にこだわりました。
染谷:
さすがに箱根本箱のトイレはパプリックな場所でもあるので本箱は置きませんでしたが、自宅ではトイレでも読書しますね、僕。なんかすごく落ち着きます(笑)。
岩佐:
厠と呼ばれて家の外にあった時代から、家の中に置かれるようになって、今やトイレは汚い空間ではなくなりつつあります。部屋とトイレが一体化できる時代。専用のスリッパを履かなければならないなんていうのはもう時代遅れ。
海法:
実際に建築家としても、トイレの性能が上がったことで、ひとつの空間としてデザインの幅が広がっているのは確かです。
岩佐:
デザインってどうしても形あるもの、目に見えるものって捉えがち。でも僕は機能も大切なデザインだと思っているんですよね。そういう視点で見ても、〈INAX〉の『SATIS』Gタイプは1歩も2歩もリードしている。なんといっても素材に使っている『アクアセラミック』が秀逸です。今までの便器とは違って、普段のお手入れで簡単に汚れが落ちるんですよね。しかも100年間も効果が続くってすごくないですか? それは客室の清掃の時短にもつながるし。技術革新に真剣に向き合い、去年グッドデザイン賞の金賞を取ったのも納得です。箱根本箱のトイレはすべてINAX製です。
染谷:
なおかつコンパクトなサイズ感や流麗なフォルムもいいですよね。スイートルームの〈ノーブルトープ〉の色合いは、ラワンの空間にしっくりなじみましたね。
岩佐:
ちょっとトーンを落としたノーブルトープは、本当に落ち着きのあるいい色。ひと昔前のトイレは、床も天井も便器も暗黙の了解で白って決まっていて、なんかどこの家もトイレは別空間でしたよね。
染谷:
新刊書店に入るとけっこう眩しかったりしませんか。空気感もパリパリしていて。あれって新刊の白さが面になっちゃっているから。店の壁が白かったらなおさらです。
海法:
その話で思い出しましたが、僕、染谷さんが選書した本を本箱に置いていく姿を見て、「すごいな」って思いました。白っぽい本棚になり過ぎないように、アイボリーやトーンの柔らかい色の本、経年変化した白すぎない古本を加えたりしてなじませていて。本を物質としても見ていること、空間や本を目にする人たちのことを深く意識して選書していて、本箱をデザインした本人としてもすごく嬉しかった。
岩佐:
まさにプロの仕事ですね。
海法:
『SATIS』Gタイプのノーブルトープという色は、そういう意味でも白黒の両極に振りきらない、本の持つ色の穏やかさに近いカラー。マウンテンビュー・コーナースイートに使われている素材やトーンとも連続性を持たせることができました。素材がセラミックなので、色を加えたときの質感もとってもいいと思います。工芸品のような見え方すらしてくれる。完全にインテリアの要素です。
岩佐:
こういう選択肢は時代的にも求められていると思うし、トイレはもはやお部屋のひとつ。余談ですが、箱根本箱の部屋トイレは使い捨てスリッパを用意していますが、そのまま入っていただいて結構な空間。実際、スリッパの袋が開封されていないと、「でしょ、でしょ」って思います。
海法:
おぉ、それは僕も嬉しいです。
Restaurant
Other facility
箱根本箱
住所 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-491
電話 0460-83-8025
1泊2食 18,321円~(税別)
SATIS
100年クリーンの新素材「アクアセラミック」を標準採用するなど、これまでにない高機能でトイレをより快適な空間へと変えるタンクレストイレ。シンプルでコンパクトなフォルムを極めた《Sタイプ》と、優美で柔らかなフォルムでレッドドット・デザイン賞を受賞した《Gタイプ》の2種類(写真はフランスの伝統的な色合いを表現した《Gタイプ》ノーブルトープ)。Sタイプ244,000円~、Gタイプ327,000円~。
問合せ/LIXILお客様相談センター 0120-179-400
LIXIL
https://www.lixil.co.jp/SATISスペシャルサイト
https://www.lixil.co.jp/lineup/toiletroom/s/satis/雑誌記事転載
『自遊人』2019年2月 掲載
https://organic-exp.com/products/detail.php?product_id=2035
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公開日:2020年01月29日