LIXIL × Architects - 住宅編 Vol.02
島田陽×SATIS : 伊丹の住居「家具のようにトイレを收める」
島田陽(建築家)
住む人が自由に振る舞える
排他的にならないデザインを目指す
3階には子ども室とアトリエ、デッキがあり、リビングにはそこへと至る階段が現れています。その足元にあるのは何でしょう? 木製で4本の脚が付き、引き出しが飛び出したような格好をしています。チェストのように見えますが、これは実は階段の一部なのです。踏み面の下には、実際に物を入れられる引き出しが入っているので、チェストとしての機能も持ちあわせています。
そして東側の壁には、左右2つの造りつけの収納に挟まれて、冒頭で触れたトイレがあります。これも短い脚がついて床から浮いているので、置き家具のように感じられます。扉は両開きにつくられていますが、通常、開くのは右側だけです。
「伊丹の住居」では、床、階段、ドアといった建築の一部が、あたかも家具であるかのようにデザインされています。設計者の島田さんは、どうしてこのような設計をしたのでしょうか? それは建築家が設計した住宅を見た時の、『何か違うのではないか』という違和感に由来すると言います。 「家具がなく、造作だけで構成された空間は、すっきりとしていてとても美しい。けれどもそれは、そこに物を持ち込んではいけないような排他的なデザインになっているのではないか。」
島田さんが設計したこの住宅のリビングの空間には、オーナーの家族によって椅子や棚など、色々なものが持ち込まれています。しかし、それらは島田さんがデザインした家具や、家具のような建築要素と渾然一体となり、空間デザインの良さを損なうことにはなっていません。むしろ、そこで営まれる生活の楽しさが伝わって、好ましい印象すら与えています。
「自由で伸びやかな感じを家の中に風景として実現したかった。そうすることで、そこに住む人も自由に振る舞えるのではないかと思う」と島田さん。
島田 陽
タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所代表
1972年生まれ。京都市立芸術大学環境デザイン科卒業、同大学院修了。97年、タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所設立。12年より京都市立芸術大学、神戸芸術工科大学非常勤講師。「六甲の住居」で、LIXILデザインコンテスト2012金賞、2013年第29回吉岡賞を受賞。
「住宅を設計する場合、多くの場合で予算が十分ではないので、工務店に住宅の基本的な性能にもっぱらかかわってもらい、それ以外の意匠的な部材は別発注で入れて、組み合わせます。こちらの手間は増えますが、お客様にはある種のクラフト的な面白さも共有してもらえて喜んでもらえています。」
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公開日:2014年06月30日