AGC千葉工場 CTC×LIXIL
多様な働き方ができる空間づくり
畑澤 洋平、繰生 紘史(AGC株式会社)/荒井 美佐子(株式会社松尾工務店)
トイレに行くことも愉しくなるように
荒井氏:基本デザインをいただいて、実際に工事をしていくうえでの実施設計を担当しましたが、建物外観やトイレについては、デザインの提案から携わりました。特にトイレの配置を変更、検討する作業には時間が掛かりました。
畑澤氏:トイレを移動することになったのはレイアウトの関係です。1階は、社外の協力会社さんも利用できる会議室エリアと、従業員だけが入れるセキュリティエリアに区切られています。以前のレイアウトだとトイレがセキュリティエリア内にあったため、外部の方も使えるように配置を変えることにしました。2階、3階については、回遊式の執務室として使えるような動線を確保したかったので、中央付近にあったトイレをフロアの端に移動しました。
埋設されている配管のコンクリートを剥がして、どう配管を引っ張ってくるかなど、そのまま荒井さんに振ってしまったのでご苦労されたと思います。
繰生氏:トイレは水圧の問題があって、タンク式でないと採用できない条件でしたが、デザイン性の高いタンクレスを使いたかった。いろいろ探していたなかで、LIXILでタンク部分を隠した「パブリック向けクイックタンク式壁掛便器」を扱っていました。タンク式だけれど一見するとスタイリッシュなタンクレスに見える製品で即決でした。ノズルもおしり専用とビデ専用の2本に分かれていて、清潔感があってよかったですね。
荒井さんにはLIXILのカタログ、事例写真をいくつもお見せして、イメージするトイレのデザイン案の共有化を図りました。
小便器については、最初、別メーカーの製品を考えていましたが、検討の結果、LIXIL品を採用しました。便器の先の部分がスリムで足をそれほど広げなくてもよく使いやすいというのが理由のひとつです。また、実際に使用した従業員からは、水が便器内部にまんべんなく流れて洗浄機能がとても優れているという意見も出ています。
洗面カウンターは、採用した製品「ノセルカウンタースラント」の一択しか自分のなかではあり得ませんでした。これまでに見たことのない先進的なフォルムで、設置に必要な奥行きのスペースも他製品よりも小さくて済む。デザイン性とスペース確保、遊び心があるという点でこれしかないと決めていました。
荒井氏:採用したLIXILのシステムトイレ※は、便器や洗面台、配管のユニットなどの各パーツを現場で組み立てるだけで済みます。施工しやすく工期の短縮にもつながり、非常に良い製品でした。
大便器は壁掛けで足元が空いているので、掃除がしやすいうえに、スペースが広く感じられます。
畑澤氏:荒井さんは、タイルや照明など内装にもとてもこだわってくださいましたね。
荒井氏:各階のコンセプトに合わせながら、トイレに行くことも愉しくなるような内装デザインを心掛けました。1階はダークな落ち着いた雰囲気でまとめましたが、2階は明るくポップな空間とするため、壁にカメの甲羅のようなタイルを斜めにレイアウトし面白い図柄が目に入るよう遊び心を持たせています。
洗面スペースは、広さを演出するため、横長の一枚鏡を採用していますが、トイレ内が外から見えないように扉の向きを変え、配置をクランクさせるなど工夫しています。また、鏡の上下に照明を入れて、光を反射させることで顔がきれいに映るようにしました。
繰生氏:トイレに関しては、オート擬音(擬音装置)のせせらぎ音や、オートソープの泡立ちがよくて使い心地がよいという意見もあがっています。
今回のオフィスの改修で一番こだわったのがトイレといっても過言ではないです。老朽化が進み従業員から嫌厭されてきたトイレが、きれいで快適な空間に生まれ変わったと好評です。
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公開日:2024年09月26日