JR西日本×LIXIL
DX化が進む大阪駅(うめきたエリア)で初導入された
「詰まり検知」がついたLIXILのあふれ防止IoTトイレ
トイレ清掃の実態と課題
下村氏:もう一つ「JR WEST LABO」の取り組みとして、1日の乗降客数が30万人を超える大阪駅で、いかに清掃作業を効率化できるかに挑戦しています。特に人材不足が深刻なトイレの清掃では、管理システムの開発は急務です。私どもは、子会社であるJR西日本メンテックと、リクシルさま含めた関連企業さまと共同で、清掃管理の効率化に取り組み始めました。
トイレの空室状況が分かるデジタルサイネージをトイレ入口上部に設置しています。空室情報は清掃スタッフの端末でも見れるようにし、将来的には清掃のシステム化に役立てたいと思っています。
溝邉氏:弊社はJR西日本の子会社で、主に駅舎の清掃を行っています。大阪駅うめきた地下口が新設されるタイミングで、JR西日本より今後の清掃の在り方を検討したいので、清掃の現状と課題を整理してほしいという要望が出され、調査しました。
大阪駅を例にとると、駅全体の面積に対してトイレの面積は100分の1ほどですが、そのトイレ清掃に、清掃時間全体を100とした場合、約3割の時間が使われています。駅構内に設置されたゴミ箱のゴミの回収で約2割。この2つの業務で全体の半分を占めています。これらの作業の効率化を図ることができれば、清掃の負担がぐっと軽減されるのです。
まず、トイレ清掃の作業について詳細を調べました。例えば、一つのペーパーホルダーに、トイレットペーパーが4つ入りますが、大阪駅では大勢の方が利用するので、わずか3時間でなくなります。ということは3時間ごとにトイレットペーパーを補充しないといけないということです。
また、昼の時間帯はトイレにお客様が並んでいることが多く、清掃のために1時間ほど滞在しますが、時間内に半分も掃除できないのが現状です。1時間後に続きをやりに戻っても、混んでいると残りの半分も掃除できないという空振りが何度も起こる。また、女性トイレの掃除に男性が入るのは嫌がられることが多く、かといって女性清掃員が全て対応することも現実には厳しいです。
ペーパーホルダーや水石鹸の容器を大きくする対策もありますが、センサー技術で減り具合を検知して、清掃や備品を替えるタイミングが分かれば、効率が上がるはずです。
昼間の巡回清掃では、実際に掃除をしている時間と同じくらい、汚れの有無を見つけるために時間を要します。これをセンサー技術で、清掃が必要な場所、ゴミ回収のタイミングなどが分かれば、いまより少ない人員でもまかなえるのではないでしょうか。
清掃会社は資金力が少ない中小企業が大多数ですから、新しい技術開発ができず、空港や鉄道系の清掃会社がリードしているのが現状です。実際、他の鉄道事業者ではゴミ箱すべてにセンサーが付いている駅もあります。
清掃作業の効率化を担うLIXILのIoTトイレ
樋口氏:20年前ですと公共トイレは汚いものという認識でしたが、最近は百貨店のトイレのようにきれいになっていて、お客様の要望も高くなっています。汚される方というのは体調の悪い方や、マナーの悪い一部のお客様に限られますから、清掃回数を増やせばよいというものではなく、センサーなどの技術で汚れを知らせ、すぐに清掃できれば、クレームを減らすことができると思っています。
コンコースの巡回では、ゴミや汚れの発見に多くの時間を割いていますが、トイレではひたすら清掃作業をしています。お客様が個室に入られている間は、それ以外の作業で時間を調整しています。その点、IoT(Internet of Things)トイレですと、いつから使用されているのかがわかるので、掃除のタイミングも計りやすくなります。
現段階では使用回数しかわかりませんが、臭気や汚れが分かるようになれば、清掃回数を減らしながらも美観を保つことができますね。CBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)という、リアルタイムに状態を監視し、必要に応じてメンテナンスを行うことができる。
これまであまり「見える化」してこなかった分野ですから、データを蓄積していくことで見えてくることがあると思います。やっと始まったばかりという段階ですね。
下村氏:私どもも、そういった課題解決に向けて、トイレ清掃の管理システムを開発しているところです。今回大阪駅(うめきたエリア)に設置したLIXILのIoTトイレも含めて、データを集めております。
樋口氏:今回導入したLIXILさんのIoTトイレには、あふれ防止のための「詰まり検知」が付いているので、導入以降詰まりによる水のあふれは起こっていません。トイレの詰まりは、毎日必ずあります。トイレットペーパーの使い過ぎによる詰まりだけでなく、中には汚れた下着などを流す方もいらっしゃいます。
「詰まり検知」によって、トイレの水があふれる前に元栓のバルブが閉まり、洗浄ボタンを何度押してもそれ以上水が出ないようになっているので、床に汚水があふれることはありません。一度床に汚水があふれると清掃が大変ですから、ここで止まってもらえることで、だいぶ助かります。
紙づまりは時間が経つと紙が溶けて自然に水位が下がります。そうすると自動でバルブが開くので、その点もいいですね。清掃スタッフが、いちいちバルブを開けに来る必要がない。うめきたエリアではこれまで詰まりが発生していないと勘違するほどLIXILのIoTトイレのあふれ防止が機能しているのだと思います。
床材には、汚れても掃除がしやすい素材がいいですね。掃除には水を使いますから、お客様が滑らないような防滑性のあるもので、かつモップが引っかからないような素材が求められます。
また、掃除しやすい便器の形状や材質などもありますね。LIXILさんの衛生機器は汚れが付きにくい表面加工がされていて、どんどん良いものに進化していると実感しています。素材などについては、JR西日本の建築担当部署と、頻繁に意見交換をしながら、掃除現場の実情を伝えるようにしています。
下村氏:「詰まり検知」については現在データを集めている段階ですので、今後は清掃員の端末と連動して、対応できるようにして行きたいと思っております。
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公開日:2024年03月25日