ハーシュ・ベドナー・アソシエイツが手掛ける
ハイクラスブランドのホテルインテリア
上田良哉(ハーシュ・ベドナー・アソシエイツ東京オフィス プロジェクトディレクター)
限られたスペースで演出する客室のラグジュアリー感
ホテルで印象に残るのは何と言っても客室の雰囲気と使い勝手だ。ホテル ザ セレスティン銀座の客室は、ホテルとしては窓が大きく取られている。窓際の天井は3mもの高さがあり、これは、建築、設備、インテリア、施工の4者が工夫をかさね、照明などの仕込みスペースをぎりぎりまで詰めて実現させたという。部屋全体が広く見えるだけでなく、銀座の街並みや夜景を大きく取り込むことは、それだけで贅沢な空間になる。
部屋の色は、オーク調のブラウンにホワイトの組み合わせで落ち着いた感じにし、アクセントカラーとしてモスグリーンを、デスクチェアーやスツール(オットマン)、ベッドのクッション、洗面所のアメニティボックスの内張などにピンポイントで使用し、華やかさを添えている。ハイクラスブランドのホテルとして他と差別化するポイントを、上田氏は以下のように語っている。
「私の個人的な感覚では、バスルームが広いという印象はとても大事だと思っています。例えば、ベッドルームを5cm広げたところで広さの印象はさほど変わりませんが、バスルームの5cmはかなり印象が違います。ベッドルームと水廻りの面積の取り合いに関して、数センチ単位で議論を尽くし、ベッドルームの割合に対してバスルームを広く取っています。
もちろん、最も長時間利用するのが就寝するベッドルームですが、バスルームも長い時間を費やす空間です。ゆったりくつろげる空間にするためにも、デザインや使い勝手を追求しています。
細かいところでは、ユニットバスの入口を全面ガラス張りにし、鏡を洗面前だけでなくトイレのほうまで含めた壁全面にして、少しでも広がりを感じられるようにしています。また、洗面カウンター自体も天板の下の小物入れをコンパクトにし、足元を広く見せるように工夫しました。
今回使用したユニットバスはLIXILのBZW-1616(1坪タイプ)で、かなりゆったりしています。ハンドシャワーに加えてオーバーヘッドシャワーもついているので、それだけでもグレード感が出せていると思います。また、バスルームを広く感じさせるために、壁の色を明るめにし、床だけ濃い色にしています。
バスタブに関しては、メーカーさんが長年研究されてきているものなので、極端に使いにくいものはないと思います。我々デザイナー目線で言うと、シンプルに見せたいときはアンダーマウントタイプのタブが好まれますし、タブの形状も四角、丸、オーバルとあり、中の形状もベンチがついているものから何もないシンプルなものまで選択肢が多いと嬉しいですね。
特注は別ですが、ユニットバスの企画寸法はほぼ決まっているので、どうやって特徴を出していくかをいつも考えます。特に予算が限られている案件ですと、どうしても似通ってきて、悩ましいところです。メーカーさんへの要望としては、差別化するためのちょっとしたオプションがあると嬉しいですね。優先順位で言うと床・壁の材料は一番雰囲気をつくりやすいので、材料もタイルだけでなく、モザイクガラスや鋼板などバリエーションの幅があれば、差別化できる重要なポイントになります」
上田氏が言うように、バスルームは、その広さや材料の良し悪など、ホテルのランクを示す象徴的な空間でもある。限られたスペースと予算の中でデザイナーが最も腐心するポイントであり、それゆえ腕が試されるのだ。
このコラムの関連キーワード
公開日:2018年10月09日