2021年に向けた省エネ住宅づくり連載コラム(第18回)
省エネ性能の説明義務制度のポイントを理解しよう!(その4)
~まるわかり解説と建築士の対応方法~
久保田博之 (住宅性能設計コンサルタント・一級建築士、株式会社プレスト建築研究所 代表取締役)
説明義務制度のポイント解説の4回目は、前回に引き続き省エネ住宅の設計のポイントを解説します。また、施工のポイントも併せて解説します。
-
Q床断熱に繊維系断熱材を使用した場合にも防湿材が必要ですか?
A防湿材が必要となる断熱材は、グラスウール、ロックウール、セルローズファイバー等の繊維系断熱材です(第17回コラム参照)。そのため、床でも断熱材に繊維系断熱材を使った場合には断熱材の室内側に防湿材が必要になります。ただし、4~7地域では、以下のいずれかの床に限り防湿材を省略することもできます。
- 断熱材下側が床下に露出する場合(A)
- 断熱材の下側が湿気の排出を妨げない構造(ネットや受け材)となっている場合(B)
また、1~3地域では、床合板を土台に直接留め付けることで床合板を気密層にできるため、床の防湿材を省略することができます。
-
Q気密材として合板を使う場合の注意点は?
A全地域で、合板等は気密材になりますが、合板のジョイント部は気密性が低下するので、以下のいずれかの方法で気密層を連続させてください。
- 合板等を下地材のある部分で継ぐ
- 下地材が無い場合は、実(さね)加工の合板を使うか、継ぎ目に気密テープを貼る
なお、この考え方は、外張断熱工法で合板を使う場合も同様となります。
-
Q床断熱仕様における玄関の土間の断熱方法を教えてください。
A基礎の立上りに断熱材を入れる方法と、土間床の下に断熱材を敷き込む方法があります。いずれの断熱方法でも、土間周囲の土台と基礎の間から、冷気が侵入しないように、気密パッキン材を施工します。
-
Q床断熱仕様におけるバスユニットまわりの断熱方法を教えてください。
Aバスユニットまわりを基礎断熱とする方法と、下部が断熱されているバスユニットを使う方法があります。
バスユニットまわりを基礎断熱とする場合は、バスユニットの床下は内部空間になるので、バスユニットの周囲の基礎と土台の間に外気が入り込まないように気密パッキンが必要となります。
下部が断熱されているバスユニットの場合は、バスユニット自体が断熱床になるため、バスユニットと外壁や床との取り合い部に気流止めが必要となります。さらに、床下が外部空間になるので床下換気も必要となります。
なお、LIXIL商品で下部が断熱されているバスユニットは、「スパージュ」と「アライズ」が該当します。 -
Q「気流止め」とは何ですか?
A壁と屋根、天井、床との取り合い部から床下の冷気が入り込むと、断熱性能の低下を引き起こし、内部結露の原因にもなります。このような現象を防ぐために、壁の上下の取り合い部の気流の流れを止める施工を「気流止め」といいます。なお、ツーバイフォー工法の場合は枠組材と面材で構成されるため、基本的に気流止めは不要です。
気流止めの方法は、一般社団法人 木を活かす建築推進協議会発行の住宅省エネルギー技術講習テキスト設計・施工編に数多くの事例が紹介されているのでご確認ください。 -
Q天井断熱の場合、野縁と吊り木があり、防湿フィルムが入りませんがどこに入れるのですか?
A野縁の下に防湿フィルムを入れ、その下から石こうボード等で押さえます。防湿フィルム付き断熱材を使った場合でも、別張り防湿フィルムが必要です。
なお、4~7地域では、石こうボード等の内装下地材の四周端部に木下地が出来るように野縁を組んで格子組野縁とした場合は、別張り防湿フィルムを省略することができます。
-
Q「桁上断熱」とはどのような断熱方法ですか?
A桁の上に合板等を施工し、その上に断熱材を施工する方法で、以下のメリットがあります。
- 合板等を作業台として施工できるので作業の安全性が確保されること。
- 複雑な屋根形状にも対応できること。
- 天井裏の配管等の作業も容易であること。
- 厚い断熱材にも比較的容易に対応できること。
- 間仕切壁の気流止めを別途行う必要がないこと。
なお、この考え方は、外張断熱工法で合板を使う場合も同様となります。
「2021年に向けた省エネ住宅づくり」と題して、2019年8月から18回の連載を続けてきたこのコラムも今回が最終回となります。約2年前の建築物省エネ法の改正によって、小規模住宅は建築士からお施主様へ省エネ性能の説明を義務化することが決まりました。しかし、小規模住宅の設計を担っている建築士事務所や中小工務店のうち、省エネ計算ができる社数の割合は概ね50%との調査結果を鑑み、省エネ住宅の設計方法をわかりやすく伝えることで説明義務制度を難なくスタートして頂きたいとの思いから本コラムの連載を開始しました。
いよいよ、4月より説明義務制度が始まります。このコラムが設計者の業務のお役に立つことができたなら嬉しい限りです。
コラム執筆者紹介
久保田 博之
株式会社プレスト建築研究所 代表取締役 一級建築士(構造設計一級建築士)
木造住宅の温熱環境・構造に関わる設計コンサルタントや一般社団法人
日本ツーバイフォー建築協会等の団体によるセミナー講師を歴任する住宅性能のスペシャリスト。
- [出典]
※1 住宅省エネルギー技術講習テキスト 設計・施工編、一般社団法人 木を活かす建築推進協議会より引用
※2 住宅省エネルギー技術講習テキスト 設計・施工編、一般社団法人 木を活かす建築推進協議会より引用・追記
2021年4月以降に設計を委託された住宅について、物件ごとに省エネ計算を実施し、省エネ基準への適否や対応策をお施主さまに説明することが、建築士の義務になります。新登場の「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」は、お施主さまへの説明義務を果たすための説明資料や提案資料、認定・優遇制度の申請時に必要な計算書も、WEB上でのカンタン操作でパッと自動作成できます。
登録料・利用料は無料!ぜひご活用ください。
LIXIL省エネ住宅シミュレーション
https://www.biz-lixil.com/service/proptool/shoene/
このコラムの関連キーワード
公開日:2021年03月15日