2021年に向けた省エネ住宅づくり連載コラム(第16回)
省エネ性能の説明義務制度のポイントを理解しよう!(その2)
~まるわかり解説と建築士の対応方法~
久保田博之 (住宅性能設計コンサルタント・一級建築士、株式会社プレスト建築研究所 代表取締役)
説明義務制度のポイント解説2回目は、省エネ基準の評価方法を説明します。また、今年4月以降に使うことができる新たな評価法の「モデル住宅法」についても説明します。
なお、説明義務制度は、省エネ基準の“適否”の説明ですが、ここでは、適合していることを前提に説明します。
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Q省エネ基準に適合するにはどのような方法があるのですか?
A計算が必要となる“標準計算ルート”、“簡易計算ルート”、“モデル住宅法”の3つと、計算不要な“仕様ルート”の全部で4つの方法があります。どれを使っても良いのですが、仕様ルートは設備仕様の適用範囲が狭いので実用的ではありません。そのため、以降の説明は計算が必要となる3つの方法について説明します。
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Q標準計算ルートと簡易計算ルートの計算は専用のソフトウェアが必要になるのですか?
A外皮性能計算はエクセルシート、一次エネルギー消費量性能計算はWebプログラムを使います。両計算ツールとも無料で使うことができます。
外皮性能計算のエクセルシートはいくつか公開されていますが、代表的なものは一般社団法人 住宅性能評価・表示協会が公開しています。また、一次エネルギー消費量性能計算のWebプログラムは以下のサイトで公開されています。
なお、両方の計算ツールを1つにまとめたのが、「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」です。このシステムを使えば、エクセルシートやWebプログラムを個々に入力する必要がありませんので便利です。さらに、説明義務制度の説明様式も自動作成できるので、さらに作業手間を削減することができます。
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Q標準計算ルートと簡易計算ルートの違いを詳しく知りたいのですが。
A両計算方法については、「住宅省エネルギー技術講習テキスト 基準・評価方法編」(一般社団法人 木を活かす建築推進協議会)」に計算方法が詳しく説明されています。テキストは以下のサイトからダウンロードできます。
また、両計算ルートの違いをカンタンに知りたい場合は、以下のコラムが参考になります。
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Qモデル住宅法とは何ですか?
AエクセルシートやWebプログラムを使わなくても、手計算で外皮性能と一次エネ性能の適否が判断できる簡便な方法です。インターネットより「戸建て住宅計算シート」をダウンロードして使います。以下のサイトからダウンロードできます。なお、現在公開されている計算シートは試行版ですので、今後内容が変更になる可能性があります。
以下のイメージが木造戸建て住宅用の6地域用外皮性能の計算シートで、2枚で一組の構成となっています。1枚目が外皮平均熱貫流率 UAの計算、2枚目が冷房期(暖房期)の平均日射熱取得率 ηAC(ηAH)の計算に用います。この計算シートを使用するためには、各部位の熱貫流率とサッシの日射熱取得率の値を準備します。
以下のイメージが木造戸建て住宅用の6地域用一次エネルギー消費量性能の計算シートで、4枚で一組の構成となっています。1枚目が判定結果の計算、2・3枚目が暖房と冷房設備の選択、4枚目が換気、照明、給湯設備の選択に用います。この計算シートを使用するためには、外皮性能の計算シートの計算結果と24時間換気設備、照明設備、給湯設備(節湯水栓)の機器の種類を準備します。
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Q1~4地域は冷房期の平均日射熱取得率 ηACの基準がないので、モデル住宅法の外皮計算シート2枚目の計算は不要ですか?
A必要です。一次エネルギー消費量性能を計算する際に冷房期(暖房期)の平均日射熱取得率 ηAC(ηAH)の値が必要になるためです。
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Qモデル住宅法で必要な熱貫流率の計算ができないのですが。
A熱貫流率の計算を行わなくても外皮計算ができるように、今後、断熱材のカタログに熱貫流率が掲載される予定です。そのカタログの中から、自社の断熱仕様の熱貫流率を確認することになります。(モデル住宅法でも計算で求めた熱貫流率を使うことも可能です)
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Q標準計算ルート、簡易計算ルート、モデル住宅法で外皮性能を計算すると、結果はどの程度異なるのですか?
A同じ住宅、かつ、同じ断熱性能で計算方法を変えた場合の外皮性能の計算例を紹介します。
結果、モデル住宅法 → 簡易計算ルート → 標準計算ルートの順にUA、ηAC共に小さくなりました。
このようにモデル住宅法に比べると、簡易計算ルートや標準計算ルートは計算手間が増えますが、有利な計算結果を得ることができます。 -
Qモデル住宅法での設備の性能はどの程度まで結果に反映できるのですか?
A設備の種類の違いによるおおまかな性能差だけで、JIS効率などの細かい性能差は反映できません。
一例として、以下の給湯設備の計算シートの通り、ガス給湯機ならば“従来型”か“潜熱回収型(エコジョーズ)”のみ選択可能です。
そのため、Webプログラムで設定可能な“給湯機のエネルギー消費効率”や“給湯配管のヘッダー方式”、“高断熱浴槽”など、より省エネ性能が高くできる仕様を反映することはできません。 -
Qモデル住宅法では一次エネルギー消費量(GJ)も計算できるのですか?
Aできません。適合可否はポイントで判断します。
各設備に対応するポイントを確認して、その合計が100ポイント以下になれば一次エネルギー消費量基準に適合していることになります。
そのため、一次エネルギー消費量(GJ)の値を知りたい場合には、標準計算ルートか簡易計算ルートを用いる必要があります。 -
Q太陽光発電設備によるエネルギー削減効果を計算できるのはどの方法ですか?
A標準計算ルートと簡易計算ルートのみ計算可能です。モデル住宅法では計算できません。
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Q計算結果は、説明義務制度以外の各種制度にも使えますか?
A標準計算ルートと簡易計算ルートは計算結果を各種制度の申請にも使えます。しかし、モデル住宅法は説明義務制度以外に使うことができませんので、標準計算ルートや簡易計算ルートの計算にも対応できる必要があるでしょう。
いかがでしたでしょうか?説明義務制度に対応するために必要な評価方法をご理解頂けたと思います。ぜひ、標準計算ルートや簡易計算ルートによる省エネ計算がカンタンに出来る「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」をご利用ください。なお、説明義務制度の内容については、今年4月までに内容が変わる可能性もありますので、国土交通省のHPで最新の情報を入手するようにしてください。
コラム執筆者紹介
久保田 博之
株式会社プレスト建築研究所 代表取締役 一級建築士(構造設計一級建築士)
木造住宅の温熱環境・構造に関わる設計コンサルタントや一般社団法人
日本ツーバイフォー建築協会等の団体によるセミナー講師を歴任する住宅性能のスペシャリスト。
- [出典]
※1 改正建築物省エネ法オンライン講座テキスト、国土交通省
※2 住宅省エネルギー技術講習テキスト「基準・評価方法編」、一般社団法人 木を活かす建築推進協議会
2021年4月以降に設計を委託された住宅について、物件ごとに省エネ計算を実施し、省エネ基準への適否や対応策をお施主さまに説明することが、建築士の義務になります。新登場の「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」は、お施主さまへの説明義務を果たすための説明資料や提案資料、認定・優遇制度の申請時に必要な計算書も、WEB上でのカンタン操作でパッと自動作成できます。
登録料・利用料は無料!ぜひご活用ください。
LIXIL省エネ住宅シミュレーション
https://www.biz-lixil.com/service/proptool/shoene/
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公開日:2021年01月15日