2021年に向けた省エネ住宅づくり連載コラム(第6回)

太陽の向きや高さを考えた快適な窓の計画をマスターしよう!
~まるわかり解説と建築士の対応方法~

久保田博之 (住宅性能設計コンサルタント・一級建築士、株式会社プレスト建築研究所 代表取締役)

第5回(冷房期の平均日射熱取得率 ηACをマスターしよう!)では、冷房期の平均日射熱取得率 ηACを適合させるためのサッシガラスの選定方法について取り上げました。今回は、省エネ基準の判定には直接影響しませんが、さらなる住環境の向上を目指すために、季節ごとの太陽の向きや高さを考えた窓まわりの計画をする方法を説明します。

夏の日射しが差し込む向き(方位)を考えた計画をしましょう

夏の強烈な日差しは真昼だけでなく、午前や午後も続きます。室内に入り込む日射熱を少なくするためには、グリーン等の日射遮蔽型のLow-E複層ガラスが効果的ですが、さらに日差しを遮蔽する工夫があります。

[南面窓まわりの工夫]

夏の真昼は太陽高度が高い(東京の場合:太陽高度78.5度)ので、南東~南~南西のサッシには、真上からの日射しを遮ることができるひさしをお勧めします。ひさしの出寸法(下図D)の決め方は、ひさしの下端からサッシの下端(下図H1+H2)の0.3倍以上を目安にすると効果的です。

季節ごとの太陽高度(東京の場合)

季節ごとの太陽高度(東京の場合)

ひさしの出寸法の考え方

ひさしの出寸法の考え方

なお、通常のひさしは日射を遮ることを目的としていますが、LIXILの「ユニットひさし スリムアート R300・R500」はひさし部がルーバー状になっており、夏は強い日射を遮る一方で冬は日射を取り入れる工夫がしてありますのでおすすめです。※1

ユニットひさしスリムアートの設置イメージ

ユニットひさしスリムアートの設置イメージ

また、ひさしの代わりにオーニングを使う方法もおすすめします。オーニングのよいところは、季節や天気に応じて開いたり畳んだりすることで、好みの日射量にコントロールができることです。オーニングの開閉が面倒な方には、電動式やセンサーによって開閉できるLIXILの「彩風(あやかぜ)」という商品がお勧めです。

彩風(あやかぜ)の設置イメージ

彩風(あやかぜ)の設置イメージ

[東西面の窓まわり工夫]

南面と異なり、東西面のサッシは低い太陽高度から水平方向の日差しが入り込むため、ひさしによる日射遮蔽の効果が低くなります。そのため、水平方向からの強い日射しを窓の外側で遮ることができるすだれやシェードを使うことをおすすめします。LIXILの「スタイルシェード」は、下図のように高い日射遮蔽効果があります。

スタイルシェードの設置イメージと日射遮蔽効果※2

スタイルシェードの設置イメージと日射遮蔽効果※2

カーテンを使って室内に侵入する日射熱を少なくすることもできますが、日射の遮蔽は窓の外側で行う方が効果が高くなります。

ただし、「彩風(あやかぜ)」と「スタイルシェード」やカーテンによる日射遮蔽効果については、「冷房期の平均日射熱取得率 ηAC」の計算に算入することができませんのでご注意ください。

なお、高い日射遮蔽性能を「冷房期の平均日射熱取得率 ηAC」の計算に算入することができる日射遮蔽部材として、LIXILの新商品の「外付けブラインドEB」がありますので、こちらの採用もご検討ください。

外付けブラインドEBの設置イメージと日射遮蔽効果※3

外付けブラインドEBの設置イメージと日射遮蔽効果※3

夏の日射遮蔽の工夫をまとめると、下図の通りとなります。

夏の日射遮蔽の工夫のまとめ

夏の日射遮蔽の工夫のまとめ

冬は日射しが差し込む高さを考えましょう

一方で、冬を快適にする窓の設計も考えましょう。冬の太陽高度は低い(東京の場合:太陽高度31.6度)ので、昼間は日射しをうまく室内に取り入れると日中だけでなく、夕方から夜までぽかぽかとした心地良さが長く続きます。

季節ごとの太陽高度(東京の場合)

季節ごとの太陽高度(東京の場合)

サーモスLow-E複層ガラスの日射熱取得率 ηは、日射取得型(クリア)が0.51、日射遮蔽型(グリーン等)が0.32です。調べ方は「第5回 冷房期の平均日射熱取得率 ηACをマスターしよう!」をご確認ください。
日射熱取得率 ηの値が小さいほど日射が室内に入り難くなりますので、Low-E複層ガラスの日射遮熱型を使うと、冬の室内への日射取得も少なくなってしまいます。
そのため、南面のガラスは冬の日射を取り入れるために日射取得型を採用し、東面と西面のガラスは夏の日射遮熱の対策のため日射遮蔽型を採用するなど、方位別にガラス仕様を変えることをおすすめします。

ただし、注意が必要なのが、夏の真昼の太陽高度は高くなりますが、それでも室内に日射が差し込みますので、南面に日射取得型ガラスを採用した場合にはひさしを設置しましょう。また、ひさしの代わりにオーニングを取り付けて、夏はオーニングで日射を遮り、冬はオーニングを畳んで日射を取り入れる対策も効果的です。

いかがでしたでしょうか?窓まわりの工夫と言っても、季節と方位を考慮するだけですので、それほど難しくないことがご理解頂けたと思います。太陽の方位や高さは毎年変わりませんので、住宅の設計者の皆さんはそれに応じて窓まわりの工夫をしておくことで住環境を向上させることが出来、結果、お施主様の満足度の向上につながるのです。

この連載コラムを読んで実践して頂ければ、「住宅の省エネ性能の説明義務化」の準備は万全!ぜひ、この連載コラムを通して、今から2021年に向けた省エネ住宅づくりの準備を始めていきましょう。

久保田 博之

コラム執筆者紹介

久保田 博之

株式会社プレスト建築研究所 代表取締役 一級建築士(構造設計一級建築士)
木造住宅の温熱環境・構造に関わる設計コンサルタントや一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会等の団体によるセミナー講師を歴任する住宅性能のスペシャリスト。

  1. ※1 「ユニットひさし スリムアート R300・R500」はひさし部がルーバー状になっているため、「冷房期の平均日射熱取得率 ηAC」の計算時にひさしの効果を算入することができませんのでご注意ください。ひさしの効果の算入が必要な場合には、「ユニットひさし スリムアート 100・200」をご使用ください。
  2. ※2 一般複層ガラスの窓にスタイルシェードを使用した場合です。関連JISなどに基づき計測および算出した値であり、保証値ではありません。
  3. ※3 国立研究開発法人建築研究所ホームページ内「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報」の日射熱取得率のガラスの垂直面日射熱取得率の表によるもので、商品を特定した性能ではありません。
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公開日:2020年01月21日