2024/09/25

LIXILの水まわり・タイル事業は、2024年4月で100周年を迎えました。
今回は、この水まわり・タイル事業の歴史や本サイトで主にご紹介している
システムバスルームの歴史について振り返ります。
これまでに生まれたイノベーションの一部をご紹介します。

時代の変化に伴い生まれたINAXと、浴室事業の歩み。

1924年、伊奈長三郎により設立されたINAX(当初社名は伊奈製陶株式会社)。常滑の陶工の家系であった伊奈家ですが、会社設立当時は日本の近代化や都市づくりの変化にともない、土管やタイル製造を行う陶業を営んでいました。以来当社は、新たな暮らしの価値を追求し続け、数々のイノベーションを創出してきました。

浴室事業

戦後、住宅需要の急激な高まりにともない、1950年代に内風呂つきの集合住宅が建設され、内風呂をもつ家庭が一気に増えました。1958年に、当社は先進的なFRP浴槽「ポリバス」を発売。1968年にはシステムバスの量産を開始しました。現在に至るまで、「キレイ」「安心」といったニーズに応えながら、さらにはお風呂本来の価値である「リラックス」にこだわった業界初の商品を数多く開発。人々の生活価値を変えてきました。「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」を存在意義とし、その実現のためにLIXILはチャレンジを続けています。

タイルの浴槽の内風呂。写真は昭和28(1953)年に撮影
写真提供:INAXライブミュージアム

ポリバスの内風呂。写真は昭和40(1965)年に撮影
写真提供:INAXライブミュージアム

当時の常識を覆す「中銀カプセルタワービル」。
そして、未来の暮らしを具現化した「ユニットバスルーム」。

写真提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

2022年、多くの人に惜しまれつつ解体された、「中銀カプセルタワービル」。1970年の大阪万博で発表された「カプセル住宅」に注目した中銀グループの創業者・渡辺酉蔵氏が、建築家の黒川紀章氏に設計を依頼したことから生まれたビルです。このビルは、世界で初めて実用化されたカプセル建築であり、メタボリズム建築の代表作として多くの建築ファンを魅了し続けてきました。

当時このビルは、未来の情報化社会をイメージして、あらゆる機能が集約された高品質な住空間として設計・考案されました。その水まわり設備を請け負ったのが当時の伊奈製陶株式会社でした。当時の技術で、6畳間の一角にバス、トイレ、洗面所をどう組み込むのかは、誰も予想がつきませんでした。しかし、伊奈製陶はそれを成し遂げます。コンパクトな空間の中に、バス、トイレ、洗面所の3つの機能が十分に備わった「ユニットバスルーム」を完成させたのです。

写真:『伊奈だより』176号より(1972年3月1日発行)

黒川紀章建築都市設計事務所の設計担当者と、
中銀マンシオン株式会社の担当者のビル完成当時の声

なぜ伊奈製陶が多くの中から選ばれたのか。黒川紀章建築・都市設計事務所(原文ママ)ではこう語っている。「まず品質のよいことがあげられます。それに、すべてが特別注文で新技術の開発が要求されますから、企業がその開発にどれだけ積極的に協力してくれるか、が問題でした。その点で、伊奈さんがどこよりも梢極的に協力してくれたといえます。これからもカプセルは伊奈さんにお顆いしようと思っています。」
また、中銀マンシオン(株)の担当者も、「伊奈さんがこのカプセルマンシオンの開発にもっとも熱心で、協力的でした。オリジナル製品ですから大変だったろうと思いますが、ほんとうによくやってくれました。出来栄えも抜群で、このユニットバスだけ買いたい、というお客さんもいるほどです。」と、語っていた。

『伊奈だより』176号より(1972年3月1日発行)

多くのイノベーションを生み出してきた「なんとかせにゃあ」の精神。

LIXILの文化施設INAXライブミュージアムでは、企画展「なんとかせにゃあクロニクル ―伊奈製陶100年の挑戦―」を開催中です。中銀カプセルタワービル解体時に取り出したカプセルをはじめ、伊奈製陶からINAXに至るものづくりの歴史を、年表とエポックメイキングな製品や技術などの展示とともに展観します。「なんとかせにゃあ」と奮闘し挑み続けた伊奈製陶のチャンレンジ精神を感じていただけることと思います。
※中銀カプセルについては、現在カプセル内に入って見学することはできませんが、窓から室内をご覧いただけます。

中銀カプセルタワービル カプセルユニット(1972年) 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト蔵
写真提供:INAXライブミュージアム 左・中央 撮影:河合秀尚 右 撮影: 尾鷲陽介

今回は、設立から、イノベーションを実現してきた当社の歴史の一端をご覧いただきました。
企画展「なんとかせにゃあクロニクル ―伊奈製陶100年の挑戦―」では
ほかにも様々な挑戦の歴史をご覧いただけます。
この機会に、ぜひ会場へお越しください。