2021/03/25

今回は番外編として、ホテルの企画・設計・運営をはじめ、広くまちづくりに事業として取り組まれている
UDS株式会社 取締役副社長の中原典人氏に、withコロナ時代に求められるホテルの差別化と工夫、
そして今後のホテル業界の潮流についてお話を伺いました。
※こちらの記事は、2020年12月にLIXIL開催のセミナーを抜粋したものとなります。

コロナで大打撃を受けたホテル業界。
2021年以降は新規リニューアル等が増える見込み。

新型コロナウイルス感染症は、ホテル業界にかつてないほどの影響を及ぼしました。現状は「Go To トラベル」事業などで平均客室稼働率は40%台まで回復してきましたが、通常70〜80%程度の稼働率を見込んで全体収支を組んでいる施設が多いため、依然、厳しい状況は続いています。「Go To トラベル」事業も、高級ホテルに需要が偏っている傾向があり、単価が低いビジネスホテルとの格差が広がっていると言えます。

また、4月から外国人旅行客の需要はほぼゼロに近い状況が続いており、外国人をメインターゲットにしていたホテルは、国内旅行客の需要獲得に大きく方針転換が求められています。運用面でも変化が見られ、チェックイン・アウト時やブッフェ形式の食事などでソーシャルディスタンス対応が迫られています。他にも検温の実施、マスク着用義務化、チェックアウト後の清掃・換気の徹底等、ホテルにとっては稼働率の減少に加え、労力やコストがかさむ大変厳しい状況です。

さらに新規ホテル参入計画の中止や出店見直しをはじめ、経営不振による倒産が相次いでいます。
一方で、それらの土地や建物など不動産に対する投資も進んでおり、2021年以降はリブランデッドや新規ニューアル等の動きが増えるのではないかと考えております。

これからのwithコロナ時代、
生き残るために必要な差別化と工夫とは。

厳しい状況が続くホテル業界、withコロナ時代に必要な差別化と工夫に取り組んでいる施設が多くあります。
コロナ禍でリモートワークの普及が進んだことで、ビジネス利用客の取り込みを積極的に進めるホテルが増えています。
例えば弊社の運営するホテルのひとつでは、Wi-Fiなどの通信設備はもちろん、客室内のベッドをなくしてデスクと椅子を設置し、仕事環境の整備を進める客室もあります。お客様の「ベッドがあると、仕事に集中しづらい」という声に応えて生まれたアイデアです。また弊社以外の事例では、広く開放的なロビー空間を、コワーキングスペースとして活用するホテルもあります。フリードリンクでWi-Fi使い放題、時間利用でスペースを提供し、収益につなげているのです。

コロナ禍での需要獲得に向け、新たな宿泊・滞在プランを打ち出すホテルも多くあります。例えば、宿泊なし日帰りでの女子会プラン、お子様連れにうれしい託児所セットプラン、プライベートパーティなどの利用を促す1棟まるごと貸切プランなどです。さらに、お客様の関心が高まる客室の新たな清掃・衛生基準として、72時間未使用の客室だけを提供するプランなども特長的。各施設が、差別化に向けた新たな価値提供プランを検討しているのです。

そしてwithコロナ時代、都市型のビジネスホテルと郊外型のリゾートホテルにおけるサービスの二極化が、より加速すると想定されます。その中でも、「ライフスタイルの変化」、「デジタル化」、「アナログの価値」といったものがキーワードになってくると考えます。

ビジネスホテルとリゾートホテル、
今後、加速するであろう二極化の流れ。

先述した通り、ビジネスホテルでは、リモートワークの普及など働き方の変化により、ビジネス利用を中心としたサテライトオフィス化が一層進んでいくと考えられます。ネットやPC環境はもちろん、デスクやOA機器等、快適なビジネス環境の整備が、差別化においてますます重要となるのです。またオンタイムでのビジネス利用に対応するため、チェックイン時間を早めてチェックアウト時間を遅くしたり、お客様が自由に選べるようなタイムプランが増えていくことも想定できます。

さらに、AIをはじめ「デジタル化」の加速も見込まれます。高騰する人件費と感染予防の観点から、チェックインの無人化や決済時の電子マネー導入、タブレットや音声制御システムの導入などがスタンダードになると考えます。今後は、24時間無人のビジネスホテルが増えてくるかもしれません。

一方、様々な交通手段の進化によって、郊外型のリゾートホテルもクローズアップされており、これまで以上に、自然環境やおもてなしなど「アナログの価値」が重視されると考えます。都心にはない豊かな自然環境の中で、他にはない体験を重視した贅沢な付帯サービスを提供するホテルや、コンシェルジュやバレーサービスなどのサービス面をより強化したホテルなどの需要が増えるのではないでしょうか。宿泊や滞在の過ごし方が変化したことで、長期滞在に対応するプランや手軽にリゾート気分が味わえるサービスなども、人気が高まるのではないかと考えています。

PROFILE

中原 典人 氏

UDS株式会社 取締役副社長CCO
(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)

一級建築士。和設計事務所を経て、1999年にUDS入社(旧都市デザインシステム)。コーポラティブハウス、賃貸住宅をはじめ、ホテル・商業施設・オフィスなど、建築にとどまらず、インテリア・プロダクトデザイン等も手掛ける。
余白を残すこと、マイナスのデザインをコンセプトに空間を組み立てる。

いかがでしたでしょうか。
withコロナ時代に必要とされる差別化と工夫、そしてホテル業界の今後の潮流。
みなさまのホテル経営・運営にお役立ちいただければと思います。