まちの空間を活かす 2

人の流れを変えた新宿駅東南口の高架下空間

官民が連携して創造する賑わいの公共空間

新宿駅東南口広場と一体的に整備された国道20号高架下空間。

かつて新宿駅東南口は「御大典広場」と呼ばれ、戦後の闇市の名残りで不法占用した店舗や露店が立ち並んでいた。治安も悪く、環境改善を模索していた建設省(当時)と新宿区が連携し、1985年の埼京線開通に伴う新宿駅東南口改札開設を機に、地元商店街、JR東日本と協議のうえ駅前広場を計画する。広場の整備は国が行い、1994年に新宿駅東南口広場が完成。以来、憩いの場・交流の場として、新宿区が日常の管理を担ってきた。
その後、新宿駅東南口広場南側を通る国道20号新宿跨線橋(1925年架設)が老朽化のため架け替えとなる。工事は新宿駅南口地区基盤整備事業の一環として1999年に着手し2012年に完了したが、跨線橋を架け替えたことにより駅前の高架下に大空間ができた。この空間を利活用しようと、2010年頃から国・新宿区が地元商店街で意見交換を行い、2014年10月には国、新宿区、有識者を交えた高架下検討委員会を開催。新宿区が国の協力のもと、「賑わいの創出」「回遊性の向上」「周辺環境の向上」を図る目的で、各種施設を備えた国道20号高架下空間を整備することになった。
同時に、バスタ新宿、JR新宿ミライナタワーの開業で賑わいを見せる南口周辺の新たな顔として、新宿駅東南口広場も国がリニューアル整備を進め、2016年12月、国道20号高架下と広場が一体的となった解放感あふれる公共空間が生まれた。また、リニューアルにあわせて、新宿区の友好都市である長野県伊那市の「タカトオコヒガンザクラ」を植樹。春には早咲きの桜が訪れた人を楽しませ、広場のシンボルとなっている。
国道20号高架下空間は観光案内所、食事提供施設併設のイベントスペース、喫煙スペース、自転車等駐輪場で構成されていて、各施設事業は公募型プロポーザル等で選定された民間事業者と連携しながら行っている。一般的に駐輪場に活用されることが多い国道の高架下としては、先駆的な取り組みだ。また、施設の建物整備や運営だけでなく、維持管理を民間事業者が行うのもこれまでとは大きく異なる点の一つ。観光案内所周辺(一部除く)とイベントスペースはルミネ、喫煙スペースは都市環境整美、自転車等駐輪場はJR東日本と協定を結び、飲食店や自販機の売り上げ、駐輪場の利用料などの収入を周辺道路や高架下空間、広場の清掃等の維持管理に充てている。新宿区だけで行っていた以前と比べ、官民一体で取り組むことで、より快適な空間を提供できるようになった。併せて、木調のデザインで統一された各施設外観も、これまでの薄暗い歩行空間とは一転して明るく親しみやすい雰囲気を演出。多い日で1日5万人以上が行き交うようになり、新たな人の流れをつくり出した。地元、国、区、事業者が連携することで、新宿駅東南口広場周辺の賑わい創出、環境改善を望んでいた地元の長年の想いが実現し、以前にも増して街に活気があふれている。

「御大典広場」と呼ばれていた1993年頃の整備前の様子。(提供:新宿区)
現在の観光案内所側に当たる1996年頃の国道20号高架下。(提供:新宿区)
配置図(提供:新宿区)
新宿駅東南口広場には友好都市の長野県伊那市から寄贈されたタカトオコヒガンザクラが植樹された。(提供:新宿区)

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公開日:2018年02月28日