ごみ分別に始まる循環型の未来まちづくり
――鹿児島県・大崎町の挑戦
第1回 まちを訪ねて、リサイクルシステムを体感する。
1つのまちだけでは完結できないリサイクルシステム
循環型社会を広める大崎町の戦略
――OSAKINI PROJECT
サーキュラーヴィレッジ・大崎町を体感する・体験型宿泊施設「circular village hostel GURURI」
リサイクルシステムの成功を経た今、大崎町が目指す次なるプロジェクトは、すべての資源が循環するまちづくり。資源循環の幅を広げ、進化させ、環境負荷を低減し、持続可能な社会をつくっていこうとするものです。2021年、まちと民間企業が協力して(一社)大崎町SDGs推進協議会を組織し、「OSAKINI PROJECT」と名付けて関連プロジェクトが進められてきました。目指す社会を「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」としてイメージコンセプトを掲げています。
先行して行われているのが、生ごみ堆肥化などの技術の他地域・海外展開。そして視察、体験型宿泊を含めた情報発信・情報交換。さらにこれまで分別できなかったごみを分別する新しい技術の開発など(紙おむつの分別試験が進行中)。大崎町は、いま資源循環社会を拡張しようとしているのです。
大崎リサイクルシステムの根底には、まちの課題をすべて税金で解決するのではなく、人の協力を得ていこうという姿勢があります。無理のない資源循環を継続するうえで重要な考え方です。協力を得るのは住民からだけではありません。燃料リサイクルの引受け先、粗大ごみや紙類をRDF(Refuse Derived Fuel)、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)などの固形燃料化する加工先など他地域の協力が不可欠であり、無理なくリサイクルの循環を完結させようとするとき、より広域、他地域との連携が鍵になります。さらにそもそもリサイクルは製品の製造段階から計画されていなければなりません。メーカーの理解も必要になります。
そのような背景から、循環型社会が体感できる体験型宿泊施設が2023年12月にプレオープンしました。視察拠点の拡充です。名前は「circular village hostel GURURI」。循環型のまちとくらしを理解してもらうためには、レポートを読んでもらうだけではなく、宿泊しながら実体験する、現場を訪れることが一番の近道だという考え方から企画されました。
体験型宿泊施設「circular village hostel GURURI」
「circular village hostel GURURI」は、LDK(リビング・ダイニング・キッチン)棟と2室用意された宿泊棟が外廊下でつながっている施設です。各棟にキッチンと寝室を設ける案もありましたが、人が集う拠点にしたいという想いから、1棟はまるごと大きなLDKに。キッチンはアイランド型でその脇に備わっているのは、もちろん分別ごみ入れです。ゲストはまちのスーパーで食材を買い込み、このキッチンを囲んでワイワイと料理を楽しみつつ、空けた食材パッケージをつかんでふと手が止まります。「これはどのごみ袋に分別したらいいのか?」――手引きを見ながら、みんなでごみ分別の話に花が咲きます。他のゲストハウスでは得られない体験です。
ここはもともと県立学校の教職員宿舎だった建物で、コンクリートブロック造の躯体を残して改修されました。躯体以外の木材、建具もみな再利用。建物自体がリユース、リデュース、リサイクルをコンセプトにしており、これまでのリサイクルシステムではまだ叶っていなかった建設分野の資源循環に挑戦したものでした。釘が多く再利用が難しい材は、木質バイオマスボイラーの燃料として利用されています。
大崎町の視野は、循環型まちづくりの向こうの持続可能社会におよんでいます。その現れが、この施設に込められた環境負荷低減のさまざまな工夫です。高気密高断熱仕様で、断熱等級6が実現されました。各棟に設置された家庭用エアコン1台で、真冬でも軽装で過ごせる暖かさです。
体験型宿泊施設「circular village hostel GURURI」建築概要
- 基本設計:一般社団法人 大崎町SDGs推進協議会
- 実施設計:有限会社 新越建設
- 温熱環境アドバイザー:株式会社 おりなす設計室
- 施工:有限会社 新越建設
- 延床面積:約100㎡
- 構造:補強コンクリートブロック造
- 竣工年:2023年12月(改修)
これは大崎町が展開をはじめたプロジェクトの一例に過ぎません。次回、現在進行形のプロジェクトの数々を紹介してゆきます。
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公開日:2024年03月27日