デザインのプロ向け INAXタイルコンサルティングルーム大阪がオープン
空間を差異化できるタイルのショールーム
『コンフォルト』2019 August No.169掲載
国内製造品、海外輸入タイル約700点に加え、これまでINAX が手がけた特注タイル150点以上が一堂に見られるショールームが大阪・四つ橋にオープンした。
ここではタイルのプロが、デザイナーのタイル選びの相談にも乗るという。
さっそくお二人のデザイナーに同行いただき、新しい空間を体験してきた。
DESIGNER’s TILE LABの多彩なコレクション
デザイナーと一緒に考える場所
長年にわたって深いノウハウを培ってきたタイルだけに特化し、しかも非住宅物件や集合住宅をデザインするプロユーザーを対象に、見て触れるだけではなく幅広いコンサルティングまで行う新しいショールーム。それがLIXILが今年4月1日に開設した「INAXタイルコンサルティングルーム大阪」だ。
今、タイルは、デジタル技術による精緻なデザインや、やきものらしい手のぬくもりなどから、ますます注目されている。そこで、ともに店舗などの空間デザインやプロダクトデザインに携わる隈元誠司さん(designground 55)、村上智也さん(BENDS.)のお二人に、現在進行するプランのスケッチを携え、タイルを探していただいた。
ショールームは要予約だ。ビル10 階のひっそりとした廊下を進むと、そこにタイルの殿堂がある。壁や棚、床に配置されているタイルは約380シリーズ、形状に分ければ約700種におよぶ。石や金属と見紛う床用タイルも、その上を歩いて確認できるようになっている。
「商品を見ていただくだけでなく、プランに応じたご相談を受け、一緒に考えていく場としてつくりました」と、館長の川島俊也さん。
一角には釉薬や焼成法による違いをサンプルで掲示した壁面もある。
タイルデザインの最前線を見る
訪れた隈元さんと村上さんは「すごいな」「これだけ見られるのはいいですねぇ」。
ことにお二人の興味を引いたのが、DESIGNER’s TILE LAB(DTL)のタイルコレクションと、過去の特注品テストピースのコーナーだ。
DTLとは、輸入ものと国産を取り混ぜ、タイルの最前線をデザイナーたちに向けて提案するWEBサイト。デザインを「SUPER REAL」「HYBRID TEXTURE」「LIGHT &SHADE」「PLAYFUL COLORS」「YAKIMONO DIVERSITY」の5つの方向性に分類し、新しい表現方法でタイルを見せている。サイトで紹介しているタイルの現物を見て、「攻めてますねぇ。普通はなかなか選べないものも多い」と言う隈元さんに、村上さんも「差異化できますね。これは確かに新しいな」。
また特注品コーナーには湿式タイルを中心に、土と手の感覚を伝える150種あまりが並ぶ。棚の品を手に「今、こういう土っぽさに惹かれます」と言うお二人からは、製法などの質問も次々に繰り出される。
空間のデザインイメージに合わせ、タイルを選ぶ
隈元誠司さん(designground 55)のピックアップ
温かく、美味しそうな質感と色のタイルを集めて
2019年7月に大阪にオープン予定のホテルのエントランスホール。この空間イメージに合うタイルを、ショールームにある特注品、焼成サンプル、床用タイルから選んでみた。同じタイルでも焼成温度で色が違う。「温かく、美味しそうな色に囲まれて落ち着く」がキーワード。
村上智也さん(BENDS.)のピックアップ
焼成法や素材の質感の違いをいかした“白”のゆらぎ
京都祗園のバー内装をリデザイン。右のタイル8点は特注品や焼成サンプルから選択。左5点は持参していただいた錆鉄板や叩いた銅板、乳白を混ぜたガラスブロック、和紙などのマテリアルサンプル。それらに合う、白系統で奥行きやゆらぎを表現できるタイルを探した。
差異化できる一品に出会える
村上さんはふだん、建材をしぼって考えることは少ないそうだ。つくりたい空間のイメージを表現できる素材を探すことからスタートする。そのためあらかじめ金属やガラス、紙など、手仕事によるさまざまなマテリアルサンプルをつくってもらい、ストックしているという。
「サーフェスに奥行きがあったほうが面白い。タイルも選択肢のひとつです。こうしてじかに触れて検討できるのは便利ですね」。バー空間用に選んだタイルも、奥行きを感じさせる表情を重視した。
一方隈元さんは進行しているホテルの内装デザインを想定し、「これ、いいな」「スイーツみたいで美味しそう」と、気になるタイルをいくつも集めては、並べ替えていく。
「タイルの魅力は、やはりやきものとしての質感。その上で我々は差異化できるこだわりの品が欲しい。数多く見ることは大事ですね。今日は事前に想定していたのとは違う、もっといいタイルに出会えました」と隈元さん。
ここはデザイナーからの提案を広く受け止める窓口でもある。川島さんは「こんなところにもタイルを使うのかというような提案を見ると、私もうれしくなっちゃいます」。
この場所から、タイルの可能性がいっそう広がっていくのは、間違いないだろう。
雑誌記事転載
『コンフォルト』2019 August No.169掲載
https://www.kskpub.com/book/b479892.html
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公開日:2019年09月26日