旧前田家本邸洋館 × LIXIL

時を超える極上の美意識

芦澤忠(LIXIL)

京王井の頭線「駒場東大前」駅から徒歩でおよそ10分、目黒区、駒場公園内の木々に包まれるようにして佇むのが旧前田家本邸洋館です。旧前田家本邸洋館は、加賀藩主前田家の第16代当主、前田利為の邸宅として昭和4年に竣工しました。当時の建物の基本計画を塚本靖、設計を日本橋髙島屋本館、川奈ホテルなどを手掛けた高橋貞太郎が担当しています。

西面正面玄関を望む。荘厳な外観
正面玄関。大華石の手の混んだ装飾のアーチと屋根をスクラッチタイルの外壁が引き立てる
前田利為(まえだ・としなり)1885年?1942年 旧加賀藩主、前田家第16代当主であり侯爵。
20代後半にはドイツ・イギリスに留学し、駐イギリス大使附武官を務めた。

建物外観は当時リバイバルで流行したイギリスのチューダー様式が用いられています。車寄せのアーチや稜線の屋根などの重厚な意匠、スクラッチタイルや大華石の素材を採用するなど、長年にわたって海外生活を経験した前田利為の感性が反映された邸宅です。
2013年、国の重要文化財に指定されたことを機に保存整備工事のため一時休館していましたが、2018年10月27日より一般公開が再開されました。
株式会社LIXIL(以下、LIXIL)はこのたび建立当時のタイルの復原に携わり、唯一無二の建物・空間が蘇りました。

感嘆の佇まいを味わう

階段部。手摺の透かし彫りの装飾にステンドグラスなど、隙を見せることのない完成度の高い空間

建物内部は重厚であり、かつ繊細な空間が広がります。階段の手摺や欄干に施された木彫りの装飾、ステンドグラスにシャンデリアと、至るところに美しさが溢れています。
今回の内装整備工事では、壁紙、カーテン、カーペットや家具などを、現存する資料を基に新調または調達したことで、より往時に近い姿を愉しめるようになりました。

2階 階段広間
1階玄関広間。細工を施した石柱が重厚さを魅せる
2階書斎。カーテン、カーペットは史料に基づいて復原。オリジナルの家具の存在感がより格調高く
2階夫人室。家族が集う居間として使用されていた。往時の華やかな暮らしが息を吹き返した)