INAXライブミュージアム10周年特別展「つくるガウディ」<Vol.3>

「土」と「タイル」が出会う現場─楽しむ!職人のコラボレーション

久住有生(左官職人)× 白石普(タイル職人)

『コンフォルト』2017 April No.155 掲載

「つくるガウディ」の進行中の現場全容。タイルの中でもブルー系の施釉タイルがもっとも美しいと白石さん。久住さんは土の引き摺り仕上げを展開。常滑市の近くの豊田市の黄土と、淡路の白土を使い、ドームの外側は土のままの色。内側はドームごとにピンク系、イエロー系、ブルー系、グレー系などの色合いを作業前に調整し、全体のバランスを図っている。

タイルの生命力をつつむ「土」

久住さんは、18歳でサグラダファミリアを訪れて感動し、左官職人になることを決めたという。昨年6月に制作メンバーとバルセロナを訪れたとき、改めて思うところがあった。「たとえばカサ・バトリョの2階の天井の渦巻きは、造形を左官でつくり、その表面に塗装で絵柄を描いて複雑な表現をつくりだしていることに気づきました。これを最後まで左官で仕上げるのはかなり難しいから、別の技術をうまく組み合わせている。左官がもつ造形の自由さを上手に使っていたと思います」。職人のやり方をガウディはよく知っていたし、職人も形や意匠のことをよく知っていたことが伝わってくるという。
初顔合わせの白石さんがつくるタイルを見たとき、その豊かさに驚いたという久住さん。左官材料で一番好きな土を使い、自由自在に対応できる左官力で、今回は自然にタイルを活かす側にまわっている。週末の公開制作に現場に入り、その日仕上げるドームの内外に白石さんが先にタイルを張り、その展開を久住さんが見て、土の色合いや仕上げをよりいっそうタイルに合わせるためにどう調整するか、照明による変化も視野に入れながら半日ほど考え、作業にかかる。
最初からどんな表現にするか決めてかかったら、普通の仕事と同じでつまらないと口を揃える二人。全体の半分が完了しているが、次の段階には赤や黄色などの顔料で絵付けしたタイルを張るドームと、エントランスの仕上げが待っている。なにが飛び出すか、コラボレーションは最後まで期待を呼ぶ。

久住さん。左官はどのようなかたちも表現も自由自在にできることが大きな魅力。
ルーザだけを割り付けてデザインした中央ドームの天井。

久住有生 Naoki Kusumi
1972年淡路の2代続く左官の家に生まれる。父は名左官の久住章(p.77参照)、弟の誠も左官。3歳から塗り壁の鏝を握る。京都で伝統建築の左官修業後、95年に左官株式会社を設立。表現力豊かな左官仕事で知られ、国内外で幅広く活躍している。
http://www.kusuminaoki.com

上部はツェルツ、下部はルーザ。動きのあるタイル表現に引き込まれる。
白石さんは、立体的なタイルの角度を感覚的に決めて、造形のおもしろさを引き出す。接着剤などは使わないという。

白石普 Amane Shiraishi
1970年東京生まれ。父母とも芸術家の家に育ち、20歳の時イタリア、ギリシャに留学。各地の建築に影響を受けタイル職人となる。モロッコで修業後、2003年「白石普タイルワークス」設立。タイルのデザイン、制作から施工までを行う。
http://www.tileworks.jp

取材・文/清水 潤 撮影/梶原 敏英

INAXライブミュージアム10周年特別展

会期/2017年3月31日(金)まで ※展覧会終了

つくるガウディ──塗る、張る、飾る!

第1会場「土・どろんこ館」企画展示室

建築家・日置拓人がコロニア・グエル教会に着想を得て設計、左官の久住有生とタイル職人の白石普が、公開制作で装飾を施している。3月中旬に完成予定。

つくるガウディ──実測で読み解く

第2会場「世界のタイル博物館」企画展示室

バルセロナ在住の建築学博士・田中裕也が、約40年にわたり実測し制作してきた、ガウディ建築の手描き図面を展示。徹底した実測から見えてくるガウディ建築の秘密とは。

つくるガウディ──実測で読み解く

完成!常滑ガウディ(仮)「土・どろんこ館」企画展示室

会期/4月15日(土)~5月30日(火)※展覧会終了

公開制作により完成したドームと、制作の軌跡を見ることができる。

伊東豊雄講演会
オープニングイベントとして伊東豊雄の講演会を開催。4月14日(金)。詳細はWebサイトで。

INAXライブミュージアム
愛知県常滑市奥栄町1-130_tel 0569-34-8282
開館/10:00~17:00(入館~16:30)
休館日/3月は第3水曜日。4月より毎週水曜日(祝日の場合は開館)休館に変更。年末年始。
共通入館料/一般600、高・大学生400、小・中学生200
https://livingculture.lixil.com/ilm/
※INAXライブミュージアムは(株)LIXILが運営する文化施設です。

雑誌記事転載
『コンフォルト』2017 April No.155掲載
https://www.kskpub.com/book/b479878.html

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公開日:2017年09月30日