INAXライブミュージアム10周年特別展「つくるガウディ」<Vol.2>

実測から読み解くガウディ─バルセロナ在住の田中裕也さんに聞く

田中裕也(実測家、建築学博士)

『コンフォルト』2017 February No.154 掲載

プレファブ工法を積極的に使う

第1会場は「つくるガウディ─塗る、張る、飾る!」の現場となり、左官とタイル職人による公開制作が始まっている。右から田中裕也さん、建築家・日置拓人さん、左官・久住有生さん、タイル職人・白石普さん。

今回の「つくるガウディ」展を通底するテーマである未完のコロニア・グエル教会には、グエル公園と二つの共通点があるという。「ガウディは建築の重要な基点に自然のモチーフを置いていたんです」。コロニア・グエルではエントランスの前方、中央に1本だけ地中海マツの木が残されていたが、それが建築の基点とされていた。地下聖堂の軸線が通り、基点から見ると建物全体が60度の視野で納まり、さらに進むと祭壇が30度の視野に納まる。このことがグエル公園の実測に示唆を与えた。東側の高架の一つがカーブしていくポイントに植えられていた木が、ちょうど直線から曲線が始まる基点になっていた。
また、グエル公園の高架の一部がプレファブ工法によることが写真からわかっていたが、それがほとんどすべての高架やパビリオンで行われていたことも判明。「グエル公園はたった2年で完成しました。そのために合理的な方法を使った。ガウディは驚くべき先端的な建築家だったんです」。スラブを煉瓦で部品化し、柱と梁のフレームにはめ込むことで工期の短縮を図っていた。現場で型枠にレンガと仕上げをセットし、石灰モルタルで固めるプレキャスト工法だ。これがコロニア・グエルの一部のスラブでも行われている。
まだまだ実測の成果の話はつきない。一つの発見からさらに新しいテーマを見つけ、田中さんの冒険は続いていく。

チアフルなタイルのエル ・ カプリチョ
北スペインの町、コミージャスに別荘として建てられたガウディ初期の作品で、その姿にはイスラムとキリスト教文化が溶け合う。煉瓦造の壁面は、ひまわりの花と葉のレリーフタイルが張られチアフルな印象。有料公開。 El Capricho de Gaudi
今回の展示では建築当初のタイルも間近に見ることができる。
屋根の頂部にもひまわりのレリーフタイルが。 Fernando Sanchoyarto / El Capricho de Gaudi
田中さんの実測図、エル・カプリチョの北側立面図。斜面に立つ煉瓦造2階建て、半地下。

取材・文/清水 潤 撮影/梶原 敏英(会場と人物)

INAXライブミュージアム10周年特別展

会期/2016年11月5日(土)~2017年3月31日(金) ※展覧会終了

つくるガウディ──塗る、張る、飾る!

第1会場「土・どろんこ館」企画展示室

建築家日置拓人がコロニア・グエル教会に着想を得て設計、左官の久住有生とタイル職人の白石普が、公開制作で装飾を施していく。日時や詳細は下記WEBサイトやLIXIL文化活動公式Facebookページなどで。

つくるガウディ──実測で読み解く

第2会場「世界のタイル博物館」企画展示室

田中裕也が、約40年にわたり実測し制作してきた、ガウディ建築の手描き図面を展示。徹底した実測から見えてくるガウディ建築の秘密とは。

2月4日(土)には、小学生以上を対象にしたワークショップ「ぼくとわたしのガウディ」を予定。粘土で建物をつくり、自然の素材で装飾する。定員20人、先着順。参加料金1,000(入館料込)。詳細はWEBサイトで。

INAXライブミュージアム(PART OF LIXIL)
愛知県常滑市奥栄町1-130_tel 0569-34-8282
開館/10:00~17:00(入館~16:30)
休館日/第3水曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始
共通入館料/一般600、高・大学生400、小・中学生200
https://livingculture.lixil.com/ilm/
※INAXライブミュージアムは(株)LIXILが運営する文化施設です。

雑誌記事転載
『コンフォルト』2017 February No.154掲載
https://www.kskpub.com/book/b479877.html

このコラムの関連キーワード

公開日:2017年08月31日