REPORT イオンモール常滑
“招き猫”が迎えるショッピングモールに
おもてなしのトイレ空間が誕生
『商店建築』2016年1月号 掲載
LIXILのマテリアルと技術を結集した快適トイレ空間
愛知県常滑市は、住まいと暮らしの総合生活企業として業界をリードするLIXILの衛生陶器ブランド、INAX発祥の地であり、明治20年、陶管の製造を開始した陶工、伊奈初之烝氏が大正10年に創業した伊奈製陶所がその前身となる。イオンモールでは、常滑の街に新たなショッピングモールを出店するにあたり、施設全体の環境デザインを手掛けたディ・ブレイン研究所監修のもと、この地に所縁のあるLIXILにトイレのプロデュースを依頼。この新しいショッピングモールには、LIXILのテクノロジーを結集したトイレが計画された。 同社がプロデュースしたトイレは、1階に男性用と女性用、2階には男性用と女性用の他、多機能トイレ、授乳室を併設したキッズ用があり、それぞれにコンセプトが異なる。設計を手掛けたヴォイドの丹羽浩之氏はこう説明する。
「2階のコンセプトは“世界に発信する最高のおもてなしトイレ”です。やきものであるタイルをふんだんに使い、その色や素材感、形などで常滑の風土から導き出したキーワードである「Ground」、「Sea」、「Sky」を表現しています。
女性用トイレには、壁一面にLIXILが復元したジオ・ポンティによるデザインのタイルを用い、ブルーの丸みを帯びた柄で青い海を。洗面コーナーでは光沢のあるタイルやガラスタイルなどを織り交ぜて水の輝きを表現しています。色調は、白や淡いベージュなど明るい色合いがベース。プランニングも波紋をイメージさせる楕円や曲線を多用して柔らかな印象とし、楕円の折り上げ天井には空のグラフィックを施しています。また、ゆったりと身だしなみを整えられるように、洗面コーナーとパウダーコーナーを分けて設けました。男性用は、スクエアなプランニングで、黒やダークブラウンをベースカラーとしています。直線的な柄のジオ・ポンティのタイルの他、土を連想させる茶系や黒、釉薬の窯変したような色合いのタイルを組み合わせました。また、匂いや有害物質を低減し空気を美しく整える調湿建材「エコカラット」も壁の一部に使っています。
1階は、2階とは対照的に近未来やハイテクがテーマです。タイルも使っていますが、ここではどちらかという透明感とツヤを重視し、ガラスを多用したシャープな空間になっています。女性トイレ中央に2基設けた円形の広めの個室は不透明のタペストリーシートを貼ったガラスで囲い、他の個室の扉には、ガラスのような表情のポリカーボネート製です。プランニング上では利用者のプライバシーに配慮した上で、開放的なレイアウトを意図しています。具体的には、男性用トイレの手を洗うスペースなら共用通路から見えても構わないだろうといった部分で、次世代のトイレに向けたチャレンジとも言えます。キッズ用は、土っぽいイメージのデザインクラフトシリーズのタイルにガラスアートを組み合わせ、子供が喜ぶポップな雰囲気に仕上げています。原色は使わずに、ここでも常滑の自然や風土を連想させる色合いを用いて構築していきました」
キッズ用を除く成人用の各トイレには、LIXILのハイエンドモデルであるシャワートイレ一体型便器「レジオ」が1台ずつ設置されている。そこは、さまざまなタイルをパッチワーク状に組み合わせた壁面に囲まれた特別な個室となっている。静かで強力な洗浄力を実現した洗浄機能などを搭載した「レジオ」は、本来、住宅用の製品でありショッピングモールへの導入は初の試みだという。また、その他の個室には快適なタンクレストイレ「サティス」を採用。
「イオンモール常滑」のトイレは、LIXILの提案する上質な空間デザインと最先端の技術を体験できる場となっている。
INAX ライブミュージアム(PATR OF LIXIL)
LIXIL が愛知県常滑市で“ものづくりの心”を伝えるべく展開するミュージアム活動の拠点。学生による招き猫の絵付け作業は、同施設内にある「LIXIL ものづくり工房」の協力のもとに実施された。
住所: 愛知県常滑市奥栄町1-130
TEL: 0569-34-8282
開館時間/10:00am?5:00pm(入館は4:30pmまで)
休館日/第3水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
URL: http://www1.lixil.co.jp/ilm/
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公開日:2016年03月01日