GIO PONTI × LIXIL

ジオ・ポンティの「愛すべき建築」

鈴野浩一、禿真哉(トラフ建築設計事務所)

特注タイルが開く建築の新しい可能性

今回のジオ・ポンティ展は、トラフ建築設計事務所が展示設計を担当しました。建築のみならず、舞台美術やプロダクトデザインなど、幅広い分野で活躍する若い建築家のチームです。 展覧会にかかわり、ジオ・ポンティのタイルを再現してみての感想を、代表者の鈴野浩一さんと禿真哉さんにうかがいました。

鈴野 :

「タイルという材料の面白さを、改めて感じることができました。タイルの一枚一枚は小さな部分でしかないけれども、それをつないでいくことで、格子や縞といった様々な大きなパターンを描くことができる」

禿 :

「立体感があるタイルで、光が当たると、外観に動きが感じさせるようになるところも面白い」

鈴野 :

「現代の建築では、装飾的な要素をできるだけ排除しようとする傾向があります。そうしたなかで、タイルは後から付ける装飾的な要素ととらえられてきたところがあって、
僕たちはあまり使ったことがありませんでした」

禿 :

「住宅の設計では、予算的な限りも厳しいので、そういう面からも使いづらかった」

鈴野 :

「犬を飼っている施主から設計を依頼された際、フローリングだと犬が滑ってしまうので、タイルで床を仕上げましたが、そうした機能的な要請があった時だけでしたね」

禿 :

「あの時は、カタログに載っている既成品を使ったので、タイルを特注してつくったのは、今回が初めての体験です」

鈴野 :

「型をつくったりするので手間はかかりますが、それほどの大量発注でなくても特注に対応してもらえるような印象でした。 自分たちが設計するような、それほど規模が大きくない建物でも、もしかしたら使えるのかもしれない」

禿 :

「タイルの再現に取り組んだLIXILのものづくり工房の人たちもいろいろなアイデアももっていて、しかもやる気に満ちていて、一緒にやっていて楽しかったです」

鈴野 :

「今回は有名建築家がデザインしたタイルの再現でしたが、自分たちのオリジナル・デザインでタイルを特注することも、機会があればぜひやってみたい」

建築の皮膚と体温展 INAXライブミュージアム(常滑) 撮影:梶原敏英
再現されたホテル・パルコ・デイ・プリンチピの内壁 撮影:梶原敏英
再現されたホテル・パルコ・デイ・プリンチピのタイルを敷きつめた床
撮影:梶原敏英

禿 :

「タイルは手工芸的な材料でありながら、ある程度の大量生産に耐えうる工業製品の側面ももっていて、そのハイブリッドな性格が魅力です」

鈴野 :

「装飾に対して控えめになりがちな建築家でも、タイルであれば開き直って使えるような正当性と気軽さがあります」

禿 :

「建築に色を使うのもためらうところがありましたが、タイルを使えばいろいろ挑戦できそうです」

鈴野 :

「新しい建築の可能性が広がる素材かもしれませんね」

トラフ設計事務所
禿氏:左 鈴野氏:右

鈴野 浩一(すずの・こういち)

1973年神奈川県生まれ。96年東京理科大学工学部建築学科卒業、
98年横浜国立大学大学院工学部建築学専攻修士課程修了後、シーラカンスK&H勤務。
2002-03年Kerstin Thompson Architects(メルボルン)勤務。
04年株式会社トラフ建築設計事務所共同主宰。現在、武蔵野美術大学非常勤講師、
多摩美術大学非常勤講師、京都精華大学非常勤講師。

禿 真哉(かむろ・しんや)

1974年島根県生まれ。97年明治大学理工学部建築学科卒業、
99年同大学院修士課程修了。2000-03年青木淳建築設計事務所勤務。
04年株式会社トラフ建築設計事務所共同主宰。現在、昭和女子大学非常勤講師。

展覧会概要

「建築の皮膚と体温〜イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界〜」展

会期:2014年6月6日(金)〜 8月19日(火)
開館時間:10:00 〜 17:00
休館日:水曜日、8月14〜17日
会場:LIXILギャラリー
〒150-0011 大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階
入場料:無料
巡回展(東京):2014年9月4日(木)〜 11月22日(土)開催予定

LIXILギャラリー「建築とデザインとその周辺をめぐる巡回企画展」ページへ

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公開日:2014年06月30日