JP TOWER × LIXIL

復原プロジェクトを通じた歴史的景観と建築技術の継承

塗装や付属金物にもこだわる

障子や枠の塗装仕上げも苦労した点です。創建当時のサッシは人が手作業で刷毛塗りして仕上げていました。そのテクスチュアを忠実に再現するために、刷毛の目が出るように人の手で塗ってから焼付塗装を施しています。手作業なので、1つ1つがオリジナルです。塗料は環境に配慮して、ノンフロンタイプのフッ素樹脂塗料を採用しています。膜厚管理などは厳重に行い、最新のスペックで昔ながらの質感を再現しました。サッシに付属するクレセントなどの金物も復原しました。復原する窓はFIX窓なので機能的には不要なのですが同じ真鍮の素材を使って忠実にディテールを再現しました。金物本体だけでなく、それを固定するビスも真鍮で復原しました。このことで、外観だけでなく、内部から見える部分も創建当時の意匠を忠実に再現しました。創建当時と今ではサッシの取付方法も変わっていますが現代の工法で当時の納まりの見え方を再現しています。納まり上でいうと、タイル取り合い部分も重要なポイントでした。開口寸法がタイル割付寸法の影響を受けるので製作前に元請、他業種と情報交換を行い細かい寸法を調整しました。現存していた建物は、創建当時の状態のままではなく、所々改修されていました。サッシも一部は既に改修されていました。当時の図面や写真と比較しながら、フィルムを巻き戻すように原設計を突き詰めていくことで、当時のサッシの形や納まりを復原することができました。

復原で技術や思いも受け継ぐ

こうした関係者の尽力により、創建時の外観が見事に復原されました。歴史的建造物の復原プロジェクトにおいては、検討過程でさまざまな発見があり、当時の建築技術を学び取る貴重な機会にもなっています。そうした点を踏まえると、復原は建物を受け継ぐだけでなく、技術やその建物に関わった人たちの思いを受け継ぐ重要な仕事といえそうです。

JPタワーで採用されたLIXIL製品

カーテンウォール (Permasteelisa Japan)

Low-Eガラスとエアフローウィンドウが採用されました。また日射遮蔽ルーバーや自然換気窓を設置したことで、高い快適性と環境負荷低減を両立されています。

トイレ

節水タイプの器具のほか、壁には調湿建材を採用し、快適性にも配慮しました。

歯磨きユニット

洗面器と歯磨きユニットを配置し、歯磨き後はカウンターのボタンひとつで放射状に水を流し、鉢内を綺麗に保つ事が出来ます。

外装タイル(特注品)

創建時の白く、美しい外観を忠実に復すため、80種類を超える役物の形状はもとより、タイルの色、班、釉薬の表情からそのばらつきに至るまで、忠実に再現しました。外装特注施釉タイルは、光沢感を透明釉で表現しています。

床モザイクタイル (特注品)

郵便局の室内の床についても、創建時に採用されていた無釉薬モザイクタイルを忠実に再現しました。

サッシ(特注品)

1階の7箇所は、創建時のサッシュバーを修理・矯正し、新たに再現した枠に組み込みました。またその他の再現部分も、創建時の上げ下げ窓の枠・障子のディテールを忠実に再現しました。仕上げは刷毛塗りし、フッ素焼付け塗装を施しました。

特殊ガラス手摺 (Permasteelisa Japan)

5層の吹き抜けとなっているアトリウムの各階に、ミラーストライプ模様の特殊プリントガラスの手摺が採用されました。商業施設のインテリアアクセントの1つとなっています。(写真提供:日本郵便株式会社)

JPタワー基礎データ

所在地 東京都千代田区丸の内二丁目7番2号
事業主 日本郵便株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、三菱地所株式会社
設計・監理 株式会社三菱地所設計
提携建築家 ヘルムート・ヤーン
商業施設内装デザイン 隈研吾建築都市設計事務所
施 工 大成建設株式会社
階 数 地上38階・地下4階・塔屋3階
高 さ 約200m
敷地面積 約11,600m2 (約3,500坪)
述床面積 約212,000m2 (約64,000坪)
竣工日 2012年5月31日