富士市立岩松北小学校×静岡県富士市×LIXIL

コロナ禍の教室環境改善で子どもたちを守りたい
──スタイルシェード実証実験の取り組み

宮川校長:

学校だけでは出来なかったことがたくさんあり、今回は富士市とLIXILさんと連携できたことに一番価値があったと思っています。シェードを付けていただいただけでなく、常に相談しながら進められたことも良かった。今回の「★F😊r4 y😊u★プロジェクト」というネーミングは学年目標でもありますが、4つのYouは友達の「友」、勇気の「勇」、優しさの「優」と、4つのYouを結ぶ「結」ですが、これらは「あなたのために」なんですね。

当初、LIXILの田中さんから「全国の子どもたちの困りごとを解消するために一緒に頑張りましょう!」と言われたことで、子どもたちのやる気と探究心に火を付けたと思います。子どもたちが昼休みにパソコンでリモートソフトを使ってLIXILさんとやり取りする中で、教室の授業だけでは学べないこと、社会とつながっていることがものすごい学びになったと思っています。子どもたちの学びにつながる今回のような連携を続けていけたらうれしいですね。

リモートを使ってLIXILの担当者に疑問をぶつける保健委員会の児童たち
プレゼン最終ページは「みんなで一緒に考えていきます!」の思いを伝える
リモートを使ってLIXILの担当者に疑問をぶつける保健委員会の児童たち(左)。プレゼン最終ページでは「みんなで一緒に考えていきます!」の思いを伝えた(右)(提供:2点とも富士市立岩松北小学校)

田中:

私どもLIXILとしましても、子どもたちへの教育はすごく大事なことだと思っています。これまでも、小学校5、6年生の家庭科に出前授業として「健康と環境によい住まい方」というテーマで、大きな実験キットを持ち込み、室内への風の通し方や断熱の工夫などを通して環境の大切さを伝えてきました。こうした活動で思うのは、子どもたちが学んだことは必ず保護者にも伝わるということです。子どもたちへの教育は未来に向けてですが、親世代への気づきにもつながると思っています。SDGs達成の2030年までは「行動の10年(Decade of Action)」と言われているので、企業としてもこの活動を継続しながら、全国への啓発を行っていきたいと思います。

LIXIL飯盛、LIXIL田中、前列左から石川先生、宮川校長先生、富士市の大畠さん
「★F😊r4 y😊u★プロジェクト」を官民連携で継続していくことを約束して。後列左からLIXIL飯盛、LIXIL田中、前列左から石川先生、宮川校長先生、富士市の大畠さん

石川先生:

実験を行った4年生の児童たちがこの教室で過ごすのはあと数カ月ですが、スタイルシェードはとても大事なものになっていて、リモートでLIXILさんに、「シェードに鳥の糞がついたらどうしたらいいですか?」と質問した女の子がいました。ちょっと強い風が吹いたら飛ばされることを心配して「しまおう、しまおう」となる。シェードを伸ばしすぎると風が強い時に切れてしまうと心配して、「先生!予備の残りの3巻きある?」なんて聞いてきます。みんなとっても思い入れがあるんですね。先日、次の学年にもシェードを大事に使ってほしいいから、使い方のパンフレットを作りたいと子どもたちから提案がありました。

また、こんなこともありました。市長さんや教育委員会の皆さんを招いて体育館で実験のプレゼンテーションをお披露目したのですが、バタバタしてビデオを撮れなかったので、しばらくしてもう一度プレゼンテーションを再演してもらったのです。そうしたらどの子も発表内容を覚えていて空(そら)で言えたんですね。堂々と発表している姿を見て教師たちのほうが感動してしまいました。本当に子どもたちの自信につながったと思います。

スタイルシェードへの思いを語り合った授業のようす
思いを引き継ぐために児童たちが作成したシェード取扱説明書
スタイルシェードへの思いを語り合った授業のようす(左)と、その思いを引き継ぐために児童たちが作成したシェード取扱説明書(右)(提供:2点とも富士市立岩松北小学校)

宮川校長:

私たちにとっても久しぶりの大人の自由研究みたいでしたね。これからは冬場の暖房を入れた時の換気をどうしたらいいのかを引き続き計測していく予定です。

田中:

今回、活動して思ったのは、皆さんが“自分事”で動いてくれたことです。LIXILも夏休みを返上して泊まり込みで実験に参加しましたが、富士市の皆さんも毎回参加されて、いろんなアイデアを出していただきました。これで終わりではなくて、継続していくことに意義があると思っています。協力できることがありましたらLIXILのプロジェクトチームもまた参画したいと思っておりますので引き続きよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

取材・文/フォンテルノ 特記以外の写真/シヲバラタク

  1. [注釈]
  2. ※1 ひと涼みアワード
    熱中症予防声かけプロジェクトの賛同会員(地方自治体・企業や民間団体など)が実施した、熱中症予防の啓発活動を審査・表彰する取組で、2012年から毎年秋に開催している。プロジェクト賛同会員による様々な活動を会員同士で共有、また国民に発信し、熱中症予防の啓発の輪を広げていくことを目的としている。(主催:熱中症予防声かけプロジェクト実行委員会)
  3. ※2 ユネスコスクール
    ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校。文部科学省および日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールをESD(持続可能な社会づくりの担い手を育てる教育)の推進拠点として位置付けている。現在、世界180ヵ国以上の国・地域で11,000校以上のユネスコスクールがあり、日本国内では2018年10月時点で1,116校、静岡県では富士市立岩松北小学校と静岡サレジオスクールのみとなっている。
    ユネスコスクール・ネットワークを活用し、世界中の学校と生徒間・教師間の交流を通じ、情報や体験を分かち合うことや、地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指すことがおもな活動の目的である。
  4. ※3 SDGs(エスディージーズ)
    Sustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標のこと。持続可能な社会を世界レベルで実現するために、2015年9月に国連で合意された世界共通の目標。「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(通称:2030アジェンダ)」の柱として、世界共通の17のゴール(目標)と、目標ごとの169のターゲットから構成され、国連に加盟している193の国・地域が2030年を期限に達成を目指すもの。
  5. ※4 富士市立岩松北小学校の「けやき学習」
    富士市立岩松北小学校では、「生活科」「総合的な学習」を「けやき学習」と称している。
  6. ※5 熱中症予防声かけプロジェクト
    熱中症予防声かけプロジェクトは、環境省・地方自治体・企業やメディア・地域コミュニティなどが官民一体で、熱中症予防の声かけの輪を広げていくプロジェクト。熱中症予防の5つの声かけを通じ、「声をかける」というコミュニケーションの力で、熱中症による死亡者をゼロにすることを目指している。
    LIXILは2017年より自治体と協働し「室内熱中症予防」を地域社会に広げる「クールdeピースPROJECT」活動を行ってきた。“夏でも快適に過ごせる室内環境づくり”を推進する中で、日よけ習慣の啓発に取り組んでいる。
  7. ※6 暑さ指数(WBGT)
    熱中症を引き起こす原因は気温だけではなく、湿度や輻射熱も含めて数値化されている。暑さ指数28℃以上になると熱中症のリスクが高まるとされる。
  8. ※7 SDGs未来都市
    政府の内閣府地方創生推進室は地方自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する都市を「SDGs未来都市」として選定。SDGsの理念に沿った基本的・総合的取組を推進しようとする都市・地域の中から、特に、経済・社会・環境の三側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域を2024年度までに210都市を選定することとし、2018~2020年度までに93都市が選定されている。
  9. ※8 富士市環境ウィーク
    令和2年12月5日開催を予定していた「第14回富士市環境フェア」が、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止となったことから「環境フェア」に代わり開催したイベントが「富士市環境ウィーク」。環境フェアの「市民・事業者・行政の主体を超え、環境問題への取組を推進する」テーマはそのままに、複数日開催による参加人数の分散や、ウェブ上イベントを多数開催する等「新しい生活様式」に配慮したイベント。令和2年11月29日~12月5日に渡って開催された。会場は、令和2年9月末に竣工した富士市新環境クリーンセンターと、WEB上の「ウェブ版富士市環境ウィーク」の2種類で行われた。(本稿の取材は11月30日)

富士市立岩松北小学校データ

所在地 静岡県富士市岩本123-1
実験参加者 富士市立岩松北小学校(4年生、6年生保健委員、特別支援学級児童)、富士市、 LIXIL
規模・構造 鉄筋コンクリート造 地上3階建ての3階ベランダで実証実験
用途 日よけ
LIXIL使用商品 スタイルシェード

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公開日:2021年03月24日