働く環境を整えて人材を育てる

〈ウェルネス空間〉としてのトイレ

永山祐子(永山祐子建築設計)

『商店建築』2020年10月号 掲載

働く環境を整えて人材を育てる
〈ウェルネス空間〉としてのトイレ

Yuko Nagayama(永山祐子建築設計)

Yuko Nagayama

(永山祐子建築設計)

万博パビリオンや歌舞伎町の超高層ビルなど、国内外で活躍のフィールドを広げる建築家・永山祐子さん(永山祐子建築設計)。今年7月に事務所を東京・荻窪から四ツ谷へ移転した。新オフィスはスタッフが手を動かし、DIYでつくり上げていった。トイレには、コンパクトな空間にも対応するINAXの「パブリック向けクイックタンク式床置便器」が採用されている。設計中の最新プロジェクトから移転先のトイレ事情まで、永山さんに話を聞いた。

「水」をテーマにした大型プロジェクト

住宅から店舗、公共空間まで幅広く手掛ける建築家の永山祐子さん。近年は、東京・JR山手線の高輪ゲートウェイ駅前で開催された「高輪ゲートウェイフェスト」(2020年9月6日まで)を始め、「ドバイ国際博覧会日本館」(21年10月開催予定)、「新宿TOKYU MILANO」(22年開業予定)という、国内外で三つの大型施設を設計している。「偶然ですが三つの建築には、『水』という共通のテーマが生まれました」と永山さん。それぞれのコンテクストをひも解いていった結果、異なる形で水をテーマに設計が進められた。
「『高輪ゲートウェイフェスト』は、レストランやミュージアム、イベントホールを備えます。大小同じデザインの円錐形のテント建築を並べ、うねる波のような『しらなみ』を表現しました。明治の頃まで会場周辺は海で、汽車が海沿いを走っていた。そうした情景を思い起こさせると共に、たくさんの人が寄せては返す様子をテーマにしました」

Takanawa Gateway Fest

NEW PROJECT no.1

Takanawa Gateway Fest

JR山手線の新駅・高輪ゲートウェイ駅前の広場で開催された「高輪ゲートウェイフェスト」。白波をイメージしたテント建築は、円錐形のテント部分が二重膜になっており、直射日光で温められた空気が膜の中を下から上へ流れることで熱を逃がし、内部の熱環境を保っている(撮影/表恒匡)

一方、ドバイ国際博覧会は今年秋の開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で1年延期となった。
「ドバイでは、豊かな水や緑は人々の憧れの対象です。かたや日本は水や緑に恵まれているものの水害との闘いもある。中東と日本のつながりを考えた時、両国民のパーソナリティーの根底に“水”があると感じました。そこで、会場入り口に設けたパティオに水を張り、上部を通る風が気化熱で冷やされパビリオンを吹き抜けるようにしています」
建物のフレームに取り付けられた約2000枚のPTFE膜が風で揺れ、日差しを遮る。フレームの立体格子は麻の葉模様になっていて、現地では小さな膜が張られた姿が「折り紙のよう」と話題になった。

ドバイ国際博覧会日本館

NEW PROJECT no.2

ドバイ国際博覧会日本館

会期/2021年10月1日~2022年3月31日
URL/https://expo2020-dubai.go.jp/ja

「ドバイ国際博覧会日本館」外観パース。建物前面に水盤を設け、水辺に吹いた風が気化熱で冷やされ、パビリオンを通り抜ける。フレームの麻の葉模様の立体格子は、イスラムの幾何学文様とのつながりも表している(画像提供/日本館広報事務局)

新宿・歌舞伎町の再開発プロジェクトでは、ホテル、劇場、飲食、物販で構成された全館エンターテインメントの超高層ビル「新宿TOKYU MILANO」のファサードデザインを手掛けている。テーマとなったのは、歌舞伎町に吹き上げる噴水。永山さんは「戦後復興を民間で成し遂げた歌舞伎町は、弁天様を祀る水と縁の深い場所。再開発の起爆剤として人々の熱意によって吹き上がる噴水を、ファサードのガラス表面に約200種類のプリントを施して表現する予定です」と話す。

ドバイ国際博覧会日本館

NEW PROJECT no.3

新宿TOKYU MILANO

東京・新宿歌舞伎町に2022年完成予定の「新宿TOKYU MILANO」は、ホテルや劇場、飲食、物販の全館エンターテインメント空間で構成された高層ビル。永山さんは外装デザインを手掛け、吹き上がる噴水をプリントしたガラスの反射などで表現。波をモチーフにしたオリジナルパターンのアルミキャストでファサードを覆う(画像提供/東急株式会社、株式会社東急レクリエーション)