断熱リノベの匠 第3回
「家」と「庭」を再生し、街並をつくる
櫻井 靖(代表取締役社長/株式会社 櫻井建設)
「断熱リノベの匠(たくみ)」は、工務店・ビルダーさまによる断熱リノベーションの新たな挑戦、注目すべき取り組みの事例を連載でご紹介していきます。
今回ご紹介する匠は、地域社会の未来のために、できる限りエネルギーを自給し、環境にやさしいZEHに力を入れた住まいづくりを推進されており、リノベーションにおいてもZEHに加え、街並づくりという新たな価値創造に情熱を注いでおられます。
自然豊かな山形に拠点を置き、地域に根ざした工務店として1969年に創業した「櫻井建設」。2013年に先代から事業を引き継ぎ、耐震震等級3+制震・HEAT20 G2・C値0.36以下・長期優良住宅・ZEHを標準とした、未来基準の家づくりに力を注ぐ、そんな匠が代表取締役社長 櫻井 靖 氏です。
櫻井氏は、資材や電気代の高騰、空き家の増加など、世の中のさまざまな問題を建築の視点から解決すべく積極的な取り組みを行い、その中でもSDGsについては、環境建築のトップランナーとして、持続可能な世界を実現するための17の目標のうち11にアプローチ。ZEHについても普及目標85%を目指して着実に実績を積み重ねておられます。
そんな活動の一環として、いま注力されているのがZEHリノベとのこと。既存住宅を新築同様の高性能ゼロエネルギーハウスに再生するだけではなく、庭の再生「リガーデン」にも目を向けておられるところに独自性が光っています。
新築のような暮らし心地が体感できる、ZEHリノベのモデルハウス
そもそものきっかけは、鬱蒼とした森のような状態だった築47年の空き家に出会ったことだったようで、その物件を買い取ってZEHリノベのモデルハウスに再生する計画をスタート。通常であれば樹木は一掃して建物工事を進めるところですが、庭にあった立派な紅葉の木に土地の記憶を感じ、シンボルツリーとして残すことを選択されたそうです。
その昔、この家の住人は、通りがかる近所の人に縁側から声をかけ挨拶を交わし、色づく紅葉をともに楽しんだのではないか。そんな光景が目に浮かび、地域のつながりを育む庭、そして街並をつくることも工務店の役割ではないかと考えるようになったと櫻井氏は語っておられます。
築47年の家を「まるごと断熱リフォーム」で高性能住宅に(S W工法リフォーム)
今回のZEHリノベモデルハウスの建設について櫻井氏は、人生100年時代と言われる中で、築年数の経った住宅もしっかり再生し、快適に長く住み続けるべきではとの考えから計画をスタートさせたとのこと。それとともに、LIXILの「まるごと断熱リフォーム」の登場がリノベーションに取り組む姿勢を大きく変えたのだとか。
特にポイントになったのが断熱・耐震・劣化の診断サポートとのこと。老朽化した家を高性能住宅に甦らせることは新築住宅を建てるより大変であり、精度の高い診断は不可欠。その負荷のかかる部分を専門家がサポートしてくれる価値は高いと評価されています。また、施工しやすい断熱材「スーパーウォールパネル」や住宅の状況に合わせて選択できる工法も、断熱リノベの採用を後押ししたとのこと。
今後、ますますひろがる実家問題や空き家問題を解決し、地域の美しい街並を残していきたいという想いを語る櫻井氏。ZEHリノベを体感できるモデルハウスを通じて発信される新たな提案・メッセージは、地元山形の人たちに、きっと伝わるに違いありません。
Reform Data
延床面積:33.1坪/木造2階建/築年数:1976年竣工/エリア:山形県山形市/断熱リフォームによる性能改善:省エネ区分4地域 改修前4.55W/(㎡・K)→改修後 0.33W/(㎡・K )・C値0.71
ビルダー紹介
社名 | 株式会社櫻井建設 |
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所在地 | 山形県山形市成沢西三丁目21-8 |
創業 | 1969年 |
URL | https://sakurai-k.com |
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公開日:2024年03月27日