住宅所有意向/住みたい家とインテリア(第3回)
20代30代の住みたい家のインテリア志向(調査編)
日経BPコンサルティング × LIXIL
前回までは、20代、30代の家の所有意向と住みたい家に関して話してきた。その中で住まい選定時に思い描くすごし方として「家族がゆったりとすごせる広いリビングルーム」がトップになったが、若い世代の住空間についての考え方はどうなのだろう。今回は、20代、30代男女における住みたい家の住空間、インテリアへのこだわりや重視したい点について調査した結果を紹介する。
半数近くが自宅のインテリアにこだわりありと回答
20代、30代で自宅のインテリアに対してこだわりがある(「こだわりがある」+「ややこだわりがある」)と答えたのは、46.2%で半数近くとなった。特に「こだわりがある」と回答したのは12.7%であった(図1)。
住みたい住居タイプ別で見ると、新築戸建住宅に住みたい人の54.6%、新築マンションに住みたい人の58.5%がインテリアにこだわりがあると答えた。中古戸建住宅に住みたい人では48.9%、中古マンションに住みたい人では54.2%がこだわりをもっている。このことから、家の所有を考えている人の約半数は、住居タイプにかかわらず半数に自宅のインテリアにこだわりがあることがわかった。一方、家を持つよりも賃貸住宅を望む人ではこだわりがあると答えたのが27.0%で少数派になり、こだわりはない(「あまりこだわりはない」+「こだわりはない」)が54.0%と過半数を超えた(図2)。家の所有を望む人と賃貸を望む人とでは、インテリアへのこだわりの有無に大きな差が出る結果となった。
図1 自宅のインテリアへのこだわり(SA)
図2 住みたい住居タイプ別で見た自宅のインテリアへのこだわり(SA)
インテリアは「シンプルですっきり」、「使いやすさ、機能性」を重要視
20代、30代がインテリア対して重視する点をきいたところ、上位は「シンプルですっきりしていること」が55.7%、「使いやすさ、機能性」が52.2%、「部屋全体の統一感」が42.1%となっている(表1)。
これをインテリアにこだわりのある人、ない人でみると、重視点に大きな違いがみられた。インテリアにこだわりがある人では、「センスがよくおしゃれなこと」、「部屋全体の統一感」が上位2項目となっており、特に「センスがよくおしゃれなこと」は63.9%と6割を超えた。一方、インテリアにこだわりがない人では、「センスがよくおしゃれなこと」は5.7%と低かった。こだわりがない人の上位項目を見ると、「使いやすさ、機能性」、「シンプルですっきりしていること」が選ばれており、デザイン的なこだわりは少ないが、現実的な暮らしやすさを重視する傾向がみられる(表1)。
次に、インテリアの重視点を住みたい住居タイプ別にみると、「シンプルですっきりしていること」が高かったのは、新築戸建・新築マンションに住みたいと考えている人で、いずれも6割を超えた。「使いやすさ、機能性」が高かったのは、中古マンションに住みたい人で62.5%となった。同様に、「部屋全体の統一感」に関しても54.2%と他の住居タイプの人よりも高い選択率となった。中古戸建に住みたいと考えている人は、「自分が納得できるこだわり」が38.8%、「普遍的で飽きが来ないこと」が34.7%と、高い選択率になっている。住みたい住居タイプによって、インテリアに対する重視点に特徴が表れた結果となった(図3)。
表1 インテリアに対する重視点(%)
図3 住みたい住居タイプ別で見たインテリアに対する重視点
インテリアにこだわりたい空間は「リビング」が7割
20代、30代がインテリアにこだわりたい・重視したいと考えている空間・スペースは「リビング」で、全体の70.6%が選択した。特に既婚者では78.0%と8割近くが選んでおり、2位以下の空間との選択率と大きく差が開き、「リビング」へのこだわりが突出した形となった。「リビング」に続いてこだわりたいと考えている空間として、既婚者は「ダイニング」で31.5%、続いて「キッチン」が25.5%と、LDK空間が上位に並んだ。一方、未婚者の2位は「趣味の部屋」で29.5%となった。既婚者と未婚者では、家族の共有空間と個人の空間という点で、インテリアのこだわる箇所にも差異がみられた(表2)。
表2 インテリアでこだわりたい空間(MA:上位5項目)(%)
好みのリビングイメージとしては「シンプルですっきり」した空間が人気
今回の調査では、インテリアにこだわりたい空間として多くの人に選ばれたリビングについて、15種類のリビングイメージを示し、最も好みのものを1つ選択してもらった。全体で1位となったのは、「イメージO」で20.5%が選択。次いで、「イメージB」(13.9%)、「イメージI」(10.9%)であった(図4)。
1位・2位・3位は、いずれもシンプルですっきりしたイメージであり、前述のインテリアに対する重視点(表1)において「シンプルですっきりしていること」がトップであったこととリンクした結果となっている。続いて、7.1%〜6%で僅差のポイントとなった4位から6位の5つのリビングイメージは、個性のあるものが選ばれ、デザインの印象もそれぞれ異なっている。1位から3位で広さとシンプルさが印象的なものが選ばれたのに対して、4位から6位は一部のアイテムの色や素材感に特長があり、より個性あるデザインを感じるものが選ばれている。1位から3位の上位層の割合は合計45.3%と半数近いが、4位から8位の中間層も合計32.0%と一定数の支持があり、好まれるリビングイメージが多様化している様子が伺える(図4)。
図4 最も好みのリビングイメージ(SA)
リビングイメージの選択理由のトップは「インテリア全体のカラーコーディネート」で約4割
前述のリビングイメージを選択した理由として、最も選択率の高かったのは、「インテリア全体のカラーコーディネート」で43.0%、2位は、「インテリア全体の様式(和風、洋風等)」で29.6%と、空間全体に関する項目が上位となった。3位から5位には、「家具、椅子のデザイン」が27.8%、「床の色や素材感」が24.9%、「壁の色や素材感」が24.5%と空間の特徴を印象付ける要素が選ばれた。1位の「インテリア全体のカラーコーディネート」が2番目以降と10ポイント以上の差をつけており、カラーコーディネートの重視度が非常に高いと言える(図5)。
図5 イメージ選択理由(3MA:n=800)
リビングイメージの上位の選択理由からみえるインテリアの重視点
好みのリビングイメージを選択した理由として、1位の「イメージO」では、1番目に「インテリア全体のカラーコーディネート」、2番目に「床の色や素材感」が選択された。特に「床の色や素材感」は全体よりポイントが高く、明るい木調の床を基調とした空間イメージに人気が集まったといえる。2位の「イメージB」は選択理由として突出したものはなく、1番目が「インテリア全体のカラーコーディネート」、2番目が「インテリア全体の様式」となった。空間のベースカラーの構成は1位と同様で、明るい木調の床のシンプルなカラーコーディネートが支持されている。3位の「イメージI」は、1番目の「インテリア全体のカラーコーディネート」が58.6%で1位の「イメージO」・2位の「イメージB」と比べてもポイントが高い。空間のベースとなる壁・床のカラーが白で統一されたシンプルさが好まれたと推測できる。
続く4位の「イメージN」では、1番目に「リビング階段」、2番目に「床の色や素材感」が選択された。明るい木調の床は、1位・3位のイメージと共通したカラー構成の空間だが、そこにリビング階段というアクセントが加わったところが特徴といえる。5位の「イメージC」、6位の「イメージE」では、空間の印象は異なるものの、共通して「インテリア全体のカラーコーディネート」が突出している。3位の「イメージI」でも突出していた項目だが、こちらが白で統一された空間だったのに対して、「イメージC」は黒や深い色味を組み合わせた落ち着いたカラー、「イメージE」は明るい木調の床に濃色のドアや窓枠を組み合わせており、それぞれ個性を感じる空間となっている。「イメージE」と同率6位の「イメージA」では「家具・椅子のデザイン」や「照明のデザイン」、「イメージK」では「床の色や素材感」や「窓のデザイン」が全体に比べて突出している。これらのことから、リビングのインテリアは空間全体のイメージのほかに、家具・照明・絨毯・窓(窓枠)などの部材もインテリアの一部として、空間を印象付ける重要な要素と認識されていることがわかる(図6)。
図6 上位イメージの選択理由(3MA)
[調査結果概要]
■自宅のインテリアへのこだわり
- 自宅のインテリアに対してこだわりがある(「こだわりがある」+「ややこだわりがある」)人は46.2%で、特に「こだわりがある」のは12.7%。
- 家の所有を考えている人の約半数は、住居タイプにかかわらず自宅のインテリアにこだわりがあり、家を所有せず賃貸を望む人では27.0%に留まった。
■インテリアに対する重視点
- インテリアに対して重視する点の1位は「シンプルですっきりしていること」、2位は「使いやすさ、機能性」、続く3位には「部屋全体の統一感」が選ばれた。
- インテリアにこだわりのある人の重視点は、「センスがよくおしゃれなこと」が6割を超える。一方、こだわりがない人では「使いやすさ、機能性」、「シンプルですっきりしていること」が上位となった。
- 住みたい住居タイプ別のインテリア重視点の1位は、新築戸建・新築マンションに住みたい人では「シンプルですっきりしていること」、中古マンションに住みたい人では「使いやすさ、機能性」など、住みたい住居タイプによって特徴がみられた。
- インテリアにこだわりたい空間は「リビング」が全体の約7割で、既婚者・未婚者とも「リビング」が1位となった。既婚者の2位は「ダイニング」、未婚者の2位には「趣味の部屋」が選ばれた。
■好まれるリビングの空間イメージと空間要素
- 好みのリビングイメージには、明るい色調で色数を抑えた「シンプルですっきり」した空間が多く選ばれた。
- 一方で、個性ある空間にも一定数の支持があり、そこでは「インテリア全体のカラーコーディネート」に加えて、家具・照明・絨毯・窓(窓枠)などの部材も、重視されるインテリア要素として認識されている。
- リビングのインテリアイメージの選択理由として、「インテリア全体のカラーコーディネート」が最も多く、約4割。続く2位は「インテリアの様式」で、空間全体に関する項目に票が集まった。
<調査概要>
調査名 | 20代30代の住まいに関する調査 |
---|---|
調査対象 | 全国の20〜30代男女 |
有効回答数 | 第1回:960ss、第2回:800ss |
調査期間 |
第1回:2019年3月7日(木)〜2019年3月10日(日)
第2回:2019年12月11日(水)〜2019年12月16日(月) |
調査方法 | インターネット調査 |
調査実施機関 | LIXIL、日経BPコンサルティング |
このコラムの関連キーワード
公開日:2020年03月25日