ミレニアル世代は工務店さんのココを見ている!(前編)
心地よい暮らし研究会(ココ研)
近年、「今までどおりに商談してもお施主さまの心がつかめない」「変わらなければいけないと分かっていても何をしていいのか分からない」といった工務店さんの声を、よく耳にします。
そこで、特にこれから家を建てようとする20代後半から30代は、どのような考えを持っているのか。それを知るために、住まいづくりのインフルエンサーとして、SNSの最前線で多くのフォロワーと接し、そのインサイトを理解する「心地よい暮らし研究会(ココ研)」の皆さまに、ミレニアル世代が今、家や住まいに求めていることについてお話を伺いました。
前編のテーマ:ミレニアル世代に選ばれる存在とは?
まず、ミレニアル世代とはどんな人たちなのか、どういったことを大事にしているのかについて、マキさん、中山さん教えてください!
シンプルライフ研究家/時産アドバイザー
マキさん
YouTube「エコナセイカツチャンネル」主宰。これまでに著書14冊、累計発行部数は29万部。インスタフォロワー数は2.6万を誇るカリスマ的インフルエンサー。
家事・暮らしの研究家
中山 あいこさん
ブログ「生活のメモ」は1日平均1万PVを超える。企業とのコラボ商品開発、セミナー講師など幅広く活躍する。
情報の出し惜しみはNG!キーワードは「共感力」
マキ:
「ミレニアル世代」のメインとなる20代後半〜30代の層って、インターネットを駆使して情報収集しながら、いろいろなことを、いかにお得に手に入れるかに長けた世代だと思っていて。
中山:
そうそう。コスパや効率を重視するところあるよね。何かするにもSNSやネットである程度の知識を得てから行動するし、どこが一番安いかだってネット検索すれば分かってしまうから…収入もなかなか上がらない今、価格に対してよりシビアな世代だよね。
マキ:
あと、若い世代ほど、直接話すことを避ける印象もあるよね。メールやLINEは苦じゃないけれど、セールスからすぐ電話がかかってくるのはすごくイヤ、とか。昔ならまめに電話があると、気にかけてもらえていると思えて、信頼するきっかけにもなったけど、その営業スタイルはもう通用しないかも。それくらい、コミュニケーションの仕方が変わってきている気がする。
中山:
今は、インスタなんかで、一般の人が家を建てる準備段階から、建てている途中、住んだ感想、工務店さんのいいところや不満まで、細かく発信しているよね。だから「どこの工務店で建てたんですか?」「商品の型番教えてください」とか、SNS経由でコメントや個別メッセージで直接聞けて、欲しい情報にすぐたどり着ける時代。情報量や知識レベルはかなり高い。
マキ:
そうだね。だからこそ、企業は情報の出し惜しみはNGだと思う。「続きはこちら」なんていってお問い合わせさせようとすることなんかも、実は逆効果になっていることも多いんじゃないかな。情報は出して、出して、出し惜しみしない!
中山:
たしかに。いわゆる「おとり広告」みたいなうたい文句には、「だったら要らない」で終わってしまう可能性が高いし、逆に無料で情報をたくさん出している工務店さんはすごく親切に感じちゃうな。
マキ:
だからこそ、そういう人たちが、いざ「この工務店さんに話を聞いてみよう」と、わざわざ行動に移したとき、上辺だけの営業トークじゃ簡単に心はつかめないのは当然で。HPやSNSに載っていることはもちろん知っているから、その上で、さらに自分たちの悩みや要望に対して、どんな有益な情報を提供してくれるかを、ある意味試されているんじゃないかな。期待を超えられないと簡単に見限られることもあるよね。商談では、お施主さま一人一人のニーズを引き出し、寄り添う「共感力」があるかが、すごく大事だと思う。
主役は「家」から「暮らし」へ
中山:
コラボプロデュースをさせてもらったモデルハウスで接客をした際に、小さなお子さんがいるご家族には「お子さんのためにこの場所をこう使って…」と、暮らしがイメージできるようお話しすると、「それすごく素敵ですね!」「分かります!」と言ってもらえる。今って「モノよりコト」を大事にするって言うでしょ。家づくりでは、その「コト」が、まさに「暮らし」なんだろうなって。家や設備そのものじゃなくて、それを使ってみたら、どう自分たちの暮らしが心地よく快適になるか、が重要なんだと思うの。
マキ:
そう考えると、家を建てるとき、今までなら主役はあくまで「家」だったけど、これからは、そこで暮らす「お施主さま」をどれだけ主役にできるかを突き詰めていく時代なのかも。「いい家をつくります!」といった、家そのものを売るような営業トークが響かず、お施主さまそれぞれに理想の暮らしがあって、その「理想をかなえるためにはこんな家」が提案できる工務店さんが、今後は選ばれていくのかもね。
中山:
理想って言っても壮大なことばかりじゃないよね。最近で言えば、例えば「ただいま手洗い」を取り入れる人が増えたけど、それをトイレ横に設置すれば、トイレ洗面も兼ねることができるでしょ。トイレの狭い洗面で小さくなって手を洗わずに済むよねって、こういうのも暮らしの不便さを解消した、快適な暮らしがイメージできる提案だよね。建ってからのお施主さまの暮らしにまで想像力を働かせて、具体的な提案ができるかは、まさに工務店さんの「共感力」で差がつく。
マキ:
建て売りだとしてもそうだよね。今までだったら家が主役だったから、良かれと思って家に付けていた、いろんなものってあるじゃない? 例えばカーテンレールとか。カーテンレールがなければ、ロールスクリーンやブラインドという選択もできるのに…。そういった選択肢についても情報や知識をたくさん持っている世代だからこそ、お施主さまを主役に考えて、住む人の暮らしに合わせて足せばいいといった思考で、住む人の選択肢や自由といった余白がある、シンプルな家があってもいいと思うな。
デジタル社会でも、最後は結局「人」!?
マキ:
この間、15歳の娘が「デパコス」デビューをしまして。
最初、どうしてもそのコスメを店頭で試して買いたい、けれどデパートに行くのは不安。背伸びしている感じで、接客も軽くあしらわれたら嫌だ、って言うの。
中山:
デパートのブランドコスメ、「デパコス」ね。
確かに、15歳にはちょっと勇気が要るかもー。
マキ:
でもそこで私たち世代と違うのが、SNSを使って「〇〇店の〇〇さんなら大丈夫」というところもまで徹底的に調べるの。つまり、そこまで調べられちゃうんだよね。そう考えると接客や商談で、お施主さまと直接応対する社員の方の教育って、今まで以上に重要だと感じる。高いものほどすごく調べるし、失敗したくないから慎重になるよね。
中山:
ホントそうだよね。それに、その社員さんがどれだけ会社のことが好きか、どれだけ自社の家づくりに自信や熱意があるかも、接してみればすぐ分かる。だからこそ経営者は、社員に会社を好きになってもらえるよう、社内コミュニケーションをしていく必要があると思うの。今の若い世代は転職も当たり前だからこそ余計にね。ぜひそこで、自分の会社のミレニアル世代ともっと話をして、その世代が何をどんなふうに考えるのかを知る機会にもしていただきたい!
マキ:
人材教育が大事なのは分かっていても、できていない会社って実はすごく多いと思う。これだけデジタルな社会で情報があふれていても、結局、契約までこぎつけるかは、その工務店さんの「人」だと私は思うな。多様化するニーズに対応できる共感力や提案力に加えて、最後は「人間力」!もし若い世代の社員教育やコミュニケーションに悩んでいる経営者の方がいたら、まずは自分のお子さんやお孫さんでもいい、同じ世代の人たちとたくさん話してみてください。意外な発見やヒントが得られると思いますよ!
心地よい暮らし研究会(ココ研)
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公開日:2023年09月28日