HP・SNS活用で営業が変わる!働き方が変わる!

上田かおり(株式会社ゴデスクリエイト シニア・コンサルタント)

インスタやYouTube、ホームページなどで、住宅に関するさまざまな情報があふれる今、消費者はより多くの情報を、写真や動画で「会わずに入手できる」のが当たり前になりました。そのことを理解し、デジタル推進に積極的な会社もあれば「うちみたいな小さな工務店には必要ない」「難しい」「時間がかかりすぎる」など取り入れることを拒絶している会社が多いことも事実です。
しかし世の中が進化した今、ホームページやSNSに対する印象は、昔のままでいいのでしょうか?デジタルは昔のように難しいままなのでしょうか?ここで、2021年に起こった住宅会社の実例を3つご紹介します。

●事例1 A社「ホームページの施工事例で業務効率アップ」

エクステリア専門会社 社員数:2名

2020年末、これまで制作会社に任せっきりだったホームページを自社運営に切り替え。運営開始にあたり、A社は「施工事例コーナー」の充実に取り組みました。1現場あたり10~30枚の写真を、写真1枚ずつにコメントを掲載。コメントを書くのはとても大変で時間がかかりますが「書かずに掲載したら、ただ載せただけで営業にならない。対面の営業では、丁寧に説明することが差別化になって選んでもらえているので、ホームページでも同じことが必要だと思う」とコメントを書くことに力を注がれました。
自社運営を開始してから半年、毎月5件の安定した新規問い合わせを獲得。そのうち約8割が契約につながり、営業効率が飛躍的に向上しました。

運営前 半年後
ホームページ経由の問い合わせ件数 2年で5件程度 安定的に5件/月
ホームページ経由の問い合わせの契約率76.9%
ホームページでの注力ポイント 運営 制作会社に依頼 社長が自ら発信
施工事例 写真掲載は1現場あたり2枚まで 1現場あたり10~30枚の写真を掲載。全写真に対面営業と同じように説明をコメントで入力

●事例2 B社「50代経営者にこそ意義があるネット活用」

エクステリア専門会社 社員数:2名

B社はホームページの運営見直し後、半年で問い合わせが2倍以上、8~9割の契約率の向上を実現しました。それまで、20~21時まで仕事をされていましたが、今では定時に終了できていると言います。施工事例をしっかり公開することで、お客さまとのイメージ共有に時間がかからなくなり、業務時間が短縮できたのです。
それについて社長の奥さまは「お客さまは問い合わせまでにホームページを十分見ておられるので、話が早い。おかげで、家族と食事する時間が生まれました。社長は昭和の人間で、土日に仕事しなくてどうするんだ!というタイプですが、今は土日に営業が入らなければ休みをとっています。働き方改革って、若い人の言葉のように言われていますが、実は50代の私たちにこそ必要なこと。これまでと同じ働き方だったら、この先長くは続かなかった。インターネットでの戦いに変わってから、初めは大変だなと思っていましたが、まさかこんなに業務効率化ができるとは想像していなかったので、大きな成果を得られたと思います」と語ります。

●事例3 C社「動画が営業活動 会う前からできる信頼構築」

注文住宅建築会社 社員数:4名

施工事例の充実に加え、2021年からYouTubeを開始されたC社。「大人気ワイドバルコニー」「ビルトインガレージ」「ゼロエネルギー住宅認定」など、自社の強みや特徴を社長が話す約3分の家づくり講座が中心。すべての動画はホームページに埋め込んでいます。YouTube開始後、それまで設計申し込みまで半年~1年かかっていた期間が2~3カ月に、面談回数は2~3回と、半分以下に短縮されました。「細かく丁寧に説明する」がモットーの動画は、営業現場で話している内容と同じ。お客さまはこれを会う前にご覧になることで「会ってからやっていた営業トーク」を「会う前」に体感していただくことができます。従来、対面で行ってきたことを動画がカバーし、時間のかかる信頼獲得の時間を短縮することができました。

A社もB社も社員2名の地域のエクステリア店です。ホームページに向き合う時間を「手間」ではなく「営業時間」と捉えたことが、結果的に営業効率の向上・時間短縮につながりました。またC社にとっては、動画は最早、社長やセールスの分身。アップした動画が営業活動を進めてくれる仕組みを確立しています。
それでは、実際どのようにホームページやSNSに取り組めばいいのでしょう。

大切なのは「集中と選択」
まず取り組むべきは施工事例の充実

ホームページもSNSもやれることが山のようにあり、それゆえ、何から取り組めばよいかわからず、取り組みを躊躇する住宅会社も少なくありません。人員に限りがあればなおさらです。まずは取り組みの「選択と集中」が必要です。
営業において大切なのは、与える情報で他社との違いを感じ、好きになってもらうことにありますが、これまでホームページでは「他社との違い」を「コンセプトページ」に掲載、日々の行動や考えを「ブログ」で伝えるのが一般的でした。しかしインスタやYouTubeの閲覧が日常になった現在、ホームページのみならず、インスタ、YouTubeで「施工事例」を発信し、他社との違いを伝えることが、戦い方となりました。

ホームページにかける情熱は
自然とお客さまに伝わる

ホームページなどで施工事例を発信する会社は多いですが、成果を得やすい会社とうまくいかない会社があり、そこには共通点があります。
施工事例の発信で成果を得やすい会社は、施工写真1枚1枚に特徴や強みを書いています。一方、施工事例を発信してもなかなか反響が得られない会社は、写真だけの掲載や、コメントがあっても「家族の会話が弾みます」「好きなものに囲まれて」といった「雰囲気論」に終始しています。具体的な特徴などが盛り込めていないコメントというのは、ホームページ運営に、経営者や営業・設計社員が関わらない会社に多く見受けられます。

<成果を得やすい施工事例の紹介の仕方>

施工写真1枚1枚に丁寧に特徴や強みをコメントとして書いている

成果を得やすい施工事例の紹介の仕方

<うまくいかない施工事例の紹介の仕方>

写真だけの掲載や、コメントがあっても内容に具体性が欠け「雰囲気論」になっている

うまくいかない施工事例の紹介の仕方

言い方を変えれば、ここに勝機があります。現場での営業トークは自社の強みがあふれた言葉の宝庫です。ホームページに掲載できれば、先ほど紹介したC社のように、お客さまは会う前に営業トークに触れることができます。何枚もの事例を見れば、他社との違いに何度も触れ、記憶に刷り込まれていきます。
また、1枚ずつ特徴や強みが書いてあれば、それだけで「ノウハウがある」「熱意を持って仕事をしている」ことが、言わずとも伝わります。現場でも一生懸命話す営業マンに好感が持てるのと同じで、ひとつずつコツコツ書かれた文章は、普段の仕事も一生懸命なんだろうと自然と伝わるものです。

継続していくための仕組みづくりを

このような施工事例活用を運営していくために、成功している住宅会社は次のような仕組みづくりを実践されています。

  • ① 必ず経営者がコメントを書く
  • ② 設計担当の仕事にする
  • ③ 契約が決まったら、広報が営業からお客さまの特徴、希望、家の特徴などを1時間程度かけてヒアリングする
  • ④ 竣工検査時に広報も現場に出向いて物件を体感、設計者にポイントを聞く

一度文章化した施工事例のコメントは、ホームページだけでなく、インスタ、YouTubeルームツアー動画など、さまざまなところに拡散させることができます。広報やホームページなど更新を担当する事務など、現場を知らない社員は、そのネタをいかに効果的に拡散させるかが自身の仕事になります。

ちょっとした工夫、発想の転換が
業務効率や働き方を大きく変える

ホームページやSNSは「プラスアルファの余分な仕事」「得意な人がやるもの」「広報がやるもの」といった考えが未だ根強くありますが、ご紹介した事例のように「営業時間が短縮された」「契約率が上がった」「働き方が変わった」など、むしろ営業の業務分野です。
会社規模の大小に関わらず「営業の仕事を楽にしてくれるもの」「自分を助けてくれるもの」であるのが本質です。新しい業務分野として仕事のルールや流れを、普段の仕組みに取り入れる。そんな、ちょっとした工夫、発想の転換が必要です。
基本となる運営ができれば、次は「家づくり講座動画を作りホームページやSNSで営業を行う」、さらに「いいねが集まる写真をデータで見つけ、次の撮影や施工事例掲載順に生かす」など、一歩ずつ着実に必要なことを実行します。運営においては、正しいやり方や指標を知ることが大切で、各種セミナーを活用することで継続的な正しい運営が実現します。やみくもな取り組みは不安がつきまとい、実践者に大きなストレスがかかります。健全な運営で効率をアップさせ、2022年、営業や働き方を改革していきましょう。

ご執筆者プロフィール

上田かおり(うえだ・かおり)
株式会社ゴデスクリエイト シニア・コンサルタント

1996年日本で初めて旅館・ホテルのインターネット予約システムを構築したことを機に、2004年住宅会社専門WEBマーケティング会社である(株)ゴデスクリエイトにてホームページシステム開発、WEBマーケティング戦略を行っている。最近はYouTubeやWEB広告、SNSに関するセミナーを多数開催。

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公開日:2022年02月22日