個人事業から法人化へのタイミング2
~最適なタイミングとは?~

中小企業診断士 市岡直司(株式会社市岡経営支援事務所)

先回、個人事業主から法人化(法人成り)した場合の主なメリット・デメリットをご紹介しました。まとめると以下のようになります。

個人事業主が法人化するメリット・デメリットのまとめ

【メリット】

  • 税負担が軽減される
  • 社会的な信用度が増す
  • 自分(社長)の給与に給与所得控除が使える
  • 決算対策がしやすくなる

【デメリット】

  • 設立や決算に際して費用がかかる
  • 赤字決算においても負担が必要
  • 社会保険の加入が義務付けられる

ここに挙げたように法人化にはメリットやデメリットが存在します。このメリット、デメリットをどう判断し、法人化するタイミングを考えたら良いのでしょうか?

一番のポイントは、やはり「節税の恩恵」を受けられるかどうかにあるといえます。

私の周りの個人事業主の方も概ねこの「節税の恩恵」を受けられるタイミングで法人化を行っています。

個人事業主が法人化(法人成り)するタイミング

個人事業主が法人化(法人成り)するにあたり、節税の恩恵をうけるタイミングには、主に2つあります。

①課税所得額がある基準(売上)を超える時点

個人事業主の売上には、所得税が課せられ、法人の売上には、法人税が課せられます。
所得税は、累進課税制度となっており、課税対象の所得金額に応じて税率も高くなります。

<所得税率>
195万円以下の課税所得金額 税率 5% 控除額 0円
195万円を超え、330万円以下 税率 10% 控除額 97,500円
330万円を超え、695万円以下 税率 20% 控除額 427,500円
695万円を超え、900万円以下 税率 23% 控除額 636,000円
900万円を超え、1,800万円以下 税率 33% 控除額 1,536,000円
1,800万円を超え、4,000万円以下 税率 40% 控除額 2,796,000円
4,000万円超え 税率 45% 控除額 4,796,000円

上記のように個人事業主として課税所得金額が900万円を超えると税率33%となります。 一方、法人税は、課税対象の所得金額が800万円を分岐点として、税率が決められています。

<法人税率>
資本金の額が1億円以下の中小法人の場合、年800万円以下の部分については、法人税が15%、年800万円超の部分については、法人税が23.4%

この所得税と法人税の税率の違いから、課税所得が900万円を超えると所得税と法人税の税率が逆転します。一般的には、この課税所得が900万円を超える時点が法人化を検討するひとつのタイミングと言えます。

②課税売上高が、1,000万円を超える時点

個人事業主の課税売上高が1,000万円を超えると次の期から消費税の納税義務が発生します。

法人の場合には、原則として設立1期目と2期目は消費税が免除されます。これをうまく使うと、個人事業主の課税売上高が1,000万円を超えるときに、法人会社を設立すれば消費税の納税義務を2期分回避できます。

このため、課税売上が1000万円を超える時点が法人化を行うタイミングとして考えられます。ただし、半期で1000万円を超えると法人化を行っても2期分の消費税の免除が受けられない場合もあります。また、資本金が1,000万円以上になるとこの消費税の免除は適用されないので注意が必要です。

【法人化のタイミングのまとめ】

一般的に法人化を検討するタイミングについて解説してきました。個人事業主にとって、会社を設立していつ法人化するかは、とても重要であり避けては通れない問題です。先に挙げたメリット・デメリットも考慮して適切に判断することが重要です。

また今回挙げたタイミングは一般的なものです。詳細にシミュレーションすると変わってくる場合もありますので、事前に税理士などの税の専門家に相談してみることをお勧めします。

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公開日:2019年02月19日