独立・起業の準備
(その2~会社設立か個人事業主か~)
中小企業診断士 市岡直司(株式会社市岡経営支援事務所)
起業するビジネスが決まった後、悩むポイントのひとつが
個人事業主がいいか? 会社設立がいいか?
というものです。今回は、まず両者の違いやメリット・デメリットを見ていきます。
◆個人事業主
~メリット~
1.設立費用が不要
税務署への開業届などの提出だけで、基本費用がかからない。
2.経理、税務申告など、頑張れば自分でできる
確定申告時(3月頃)に頑張れば、税理士に依頼しなくても自分で申告が可能。確定申告についての相談は無料で受けられる。
~デメリット~
1.社会的な信用が法人にくらべて低い場合がある
特に取引先が大企業の場合など、直接の取引口座を開いてもらえないことがある。
2.法人よりも融資を受けにくい
事業とプライベートとの区別がつきにくく、金融機関からみて融資をしにくい場合がある。
3.累進課税である
所得が増えれば税率が上がり、納税額が増えてしまう(所得税の最高税率は45%)。
4.社会保険に加入できない
会社組織として社会保険に加入できない。
◆会社設立(法人)
~メリット~
1.社会的な信用が高い
個人に比べ、取引先からの信用を得やすい。
2.個人事業主よりも融資を受けやすい
事業とプライベートの財布も完全に別となる。
3.累進課税ではない
法人税は累進課税ではなく、基本的に税率が一定(15%と23.4%の2種類)となる。
4.社会保険に加入できる
会社で社会保険に加入できる。社会保険料の半分は会社の損金(経費)で落とせる。
~デメリット~
1.設立費用がかかる
定款作成認証や登記手続きなどの実費がかかる。
2.経理、税務申告が複雑
個人事業主と比較すると、経理、税務申告が複雑で、税務申告を1人で行うのは困難。税理士などへの依頼が必要。
以上、個人事業主と会社設立の違いを見てきました。私のまわりでは、はじめは個人事業主として独立・起業するという方が多いです。これは税金面において、個人事業主の場合、所得が増えれば増えるほど税率が高くなっていくというのに対して、法人は基本的に一定となっています。そこで、ある程度の所得金額になるまでは個人事業主として事業を行い、個人事業の税率が法人の税率を越えたタイミングで法人にするという方法を取る方が多いように思います。
また、消費税の納税義務が発生した場合も、個人事業主から法人になることで最大4年間免税を受けられます。
しかし、これは節税という側面だけから見たものであり、事業の特性や取引先の意向などから、最初から会社設立にされる方もいます。
節税できる金額だけにとらわれることなく、総合的に判断することが必要です。
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公開日:2018年11月19日